胆嚢炎/胆管炎(読み)たんのうえんたんかんえん(英語表記)Cholecystitis / Cholangitis

家庭医学館 「胆嚢炎/胆管炎」の解説

たんのうえんたんかんえん【胆嚢炎/胆管炎 Cholecystitis / Cholangitis】

[どんな病気か]
 胆嚢炎(たんのうえん)は胆嚢に、胆管炎(たんかんえん)は総胆管(そうたんかん)と総肝管(そうかんかん)に炎症がおこったものです。両方合併しておこることが多く、合わせて胆道感染症(たんどうかんせんしょう)と呼びます。
[症状]
 胆嚢炎には、その経過から急性と慢性とがあります。
 急性胆嚢炎(きゅうせいたんのうえん)は中年の肥満した女性に比較的多く、過食(かしょく)後3~4時間して急に吐き気、上腹部痛、悪寒おかん)・高熱を生じます。深夜の腹痛発作(ふくつうほっさ)で、夜間に救急病院を受診することがよくあります。
 尿の色が濃く染まったり、黄疸おうだん)を生じることもあり、右上腹部をたたくと、炎症のために強い痛みがあります。
 慢性胆嚢炎(まんせいたんのうえん)は、無症状のものから、食後に上腹部痛をおこすものまで、その程度はさまざまですが、急性胆嚢炎に比べると症状は軽く、断続的です。
 急性胆管炎(きゅうせいたんかんえん)は悪寒・発熱、右上腹部痛、黄疸が三大症状です。急性胆管炎の重症型に急性閉塞性化膿性胆管炎(きゅうせいへいそくせいかのうせいたんかんえん)があります。この病気は胆道感染にともなって敗血症(はいけつしょう)を生じ、意識障害やショック症状などの重篤(じゅうとく)な症状が出現するため、救急処置が必要になります。
[原因]
 急性胆嚢炎の90%に胆石(たんせき)がみられます。急性胆嚢炎は、胆嚢内結石(たんのうないけっせき)が胆嚢管嵌頓(かんとん)し(はまり込み)、そこに腸内細菌(ちょうないさいきん)(十二指腸(じゅうにしちょう)内の細菌が総胆管を経由して胆嚢に至ることが多い)が感染して発生します。
 急性胆嚢炎の数%には胆石がみられないものがあり、無石胆嚢炎(むせきたんのうえん)と呼ばれます。これは、外傷、手術後の合併症として発生し、絶食のために胆嚢の収縮が不良となり、胆嚢に胆汁(たんじゅう)がうっ滞(たい)するのが発症に関係しているとされます。
 慢性胆嚢炎は胆嚢結石にともなう慢性的炎症で、慢性胆嚢炎の経過中に突然、急性炎症を生じる場合もあります。
 胆管炎は、総胆管結石(そうたんかんけっせき)あるいは胆管がんによる胆汁うっ滞に、細菌感染を併発して生じるものです。
 原因菌は、胆嚢炎・胆管炎とも、大腸菌(だいちょうきん)がもっとも多く、最近は嫌気性菌(けんきせいきん)による感染も増加しています。
[検査と診断]
 胆嚢炎、胆管炎とも血液検査で白血球数(はっけっきゅうすう)の増加、血沈亢進(けっちんこうしん)、CRP陽性がみられます。腹部超音波検査は、腹痛があっても行なえ、診断能力も高く、とても有用です。CT検査も行なわれます。
 胆嚢炎では肝機能障害は軽度ですが、胆管炎ではALP、γ(ガンマ)- GTP、LAPなどの胆道系酵素(たんどうけいこうそ)の血中濃度が上昇します。原因菌の特定には血液培養(けつえきばいよう)や、採取した胆汁の培養が必要です。
[治療]
 胆嚢炎、胆管炎ともに、安静、禁食を保ち、点滴(てんてき)による補液(ほえき)、鎮痙(ちんけい)・鎮痛薬(ちんつうやく)、抗生物質を使います。通常は数日で快方に向かいます。
 急性閉塞性化膿性胆管炎では、貯留した膿(うみ)を体外へ排出する必要があるため、体外からまたは内視鏡(ないしきょう)を使って十二指腸から、細い管を総胆管内に挿入して、排膿(はいのう)する方法がとられます。
 これらの方法でも排膿が不十分なときには、開腹手術が行なわれます。
 日常生活の注意胆石症と同様、暴飲暴食を慎み、過労を避け、規則正しい食生活をすることがたいせつです。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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