胆道癌(読み)たんどうがん(英語表記)cancer of biliary

改訂新版 世界大百科事典 「胆道癌」の意味・わかりやすい解説

胆道癌 (たんどうがん)
cancer of biliary

肝臓胆道系の癌の総称であり,胆囊癌と肝外胆管癌のことを指す。また,臨床的および病理学的に両者の判別が不可能の場合に,便宜上,胆道癌ということもある。

胆囊粘膜から発生する悪性腫瘍。組織学的にはほとんどが腺癌である。高齢の胆囊胆石合併の女性に多い。早期発見の困難な癌で,初期では無症状ないし合併する胆石症状を呈するのみである。末期では黄疸を伴う右季肋部腫瘤を形成する。腫瘍が胆囊内に限局していれば胆囊摘出手術で根治が望めるが,総肝管,総胆管,肝臓に直接浸潤やリンパ行性転移を起こしやすく,予後はきわめて不良である。診断には,超音波検査,排出性胆道造影,CT検査,血管撮影,胆囊穿刺(せんし)造影などが行われる。

単に胆管癌cancer of bile-ductともいう。総肝管,総胆管,肝門部胆管(左・右肝管の合流部付近)に発生する癌を指す。まれには胆囊管から発生することもある。組織学的には腺癌である。胆囊管の癌を除いて,胆汁の流出路を腫瘍が閉塞するため,比較的早期に黄疸が初発症状として発症する。中・高年者において,強くなる無痛性の閉塞性黄疸が特徴であり,頻度に男女差はない。診断には経皮的胆道造影が行われる。病変部を切除し,切除上端の胆管を空腸とつなげる。総胆管下部の癌は膵頭部・十二指腸切除がなされ,上部胆管の癌に比べ術後成績はよい。総胆管末端部の十二指腸壁内部に発生する癌を十二指腸乳頭部癌と称し,総胆管癌や膵頭部癌と区別する。臨床的には,腫瘤による胆管末端部の不完全閉塞に起因する細菌感染の発熱増減のある黄疸を呈する型と,十二指腸粘膜に潰瘍形成が起こり,そこから出血し,貧血を呈する型とに分けられる。十二指腸乳頭部癌の手術成績はわりあいによい。
 →胆囊造影
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百科事典マイペディア 「胆道癌」の意味・わかりやすい解説

胆道癌【たんどうがん】

肝臓から十二指腸に至るまでの胆道にできる(がん)で,胆嚢(たんのう)癌も含む。胆管癌といえば,肝臓の外側から出た胆管にできる癌をさす。1997年の胆道癌による死亡者は8029人。 最近では,超音波検査や,内視鏡などを使った造影法によって,早期癌の段階で発見されることが多くなった。胆嚢癌中高年の女性に多いのが特徴で,胆石があると発生しやすく,胆嚢癌の50〜80%に胆石が発見されている。 胆嚢癌と胆管癌では症状にやや違いがある。胆嚢癌は初期症状はほとんどないが,合併症の胆石の症状として激しい腹痛が現れることがある。癌が進行すると右わき腹から上腹部にかけて痛みが起こるが,これはにぶい痛みが特徴で,胆石のような激しい痛みとは違う。このほか,発熱,吐き気嘔吐(おうと),食欲不振,体重減少,全身倦怠(けんたい)感などがあり,さらに進行すると黄疸が現れる。 胆管癌の特徴的な症状は,黄疸が徐々に進行してくること。腹痛はないが,右わき腹に圧迫感や不快感がある。進行すると胆嚢癌と同様に,食欲不振,体重減少,全身倦怠感などがある。

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