芸術至上主義(読み)ゲイジュツシジョウシュギ(英語表記)L'art pour l'art; art for art's sake

デジタル大辞泉 「芸術至上主義」の意味・読み・例文・類語

げいじゅつ‐しじょうしゅぎ〔‐シジヤウシユギ〕【芸術至上主義】

芸術は他のものの手段として存在するのではなく、それ自身目的であり、価値であるとする立場。「芸術のための芸術」を理念とする。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「芸術至上主義」の意味・読み・例文・類語

げいじゅつ‐しじょうしゅぎ ‥シジャウシュギ【芸術至上主義】

〘名〙 フランス哲学者ビクトル=クーザンの唱えた l'art pour l'art (芸術のための芸術)の語に基づき、芸術に政治、哲学、宗教など他の文化領域介入をゆるさず、また、効用その他の目的実現のための手段ともしない立場。表現技術の高度洗練と、唯美的傾向をともなう。芸術のための芸術。
※桐の花(1913)〈北原白秋〉ふさぎの虫「只俺の芸術至上主義が俺自身を妖艷な蠧惑と幻惑世界に昏睡さして了ったのだ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

百科事典マイペディア 「芸術至上主義」の意味・わかりやすい解説

芸術至上主義【げいじゅつしじょうしゅぎ】

〈芸術のための芸術〉を主張し,芸術の社会的・道徳的効用を否定する思潮。〈無用なもののみが美しい〉と書いたT.ゴーティエ以後,フローベールボードレール,W.ペーター,O.ワイルドらが代表的。トルストイらの〈人生のための芸術〉と対照をなす。
→関連項目石川淳新ロマン主義ベン唯美主義

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「芸術至上主義」の意味・わかりやすい解説

芸術至上主義
げいじゅつしじょうしゅぎ
L'art pour l'art; art for art's sake

「芸術のための芸術 (ラール・プール・ラール) 」を主張する立場。 19世紀ロマン派 (→ロマン主義美術 ) の中心的命題の一つ。芸術は社会性,倫理その他のなにものにも拘束されず,それ自身のために存在するという思想。 19世紀初頭の新古典主義においては,大革命を導いた D.ディドロたちの芸術に社会的任務を要請する態度が一般的であったが,1820年代のロマン派の台頭は,新古典主義に対する反動として,また芸術の近代化の一契機として,「芸術のための芸術」の理念を掲げた。この標語を造ったフランスの美学者 V.クーザン,文学者 T.ゴーティエ,フローベール,マラルメたちがその運動の主体で,ボードレール,ユイスマンスらの唯美主義と結びつき,イギリスでは O.ワイルド,W.ペーターの,アメリカでは E.ポーの思想に及んだ。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「芸術至上主義」の意味・わかりやすい解説

芸術至上主義
げいじゅつしじょうしゅぎ

芸術のための芸術

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の芸術至上主義の言及

【ゴーティエ】より

…初期の詩作《アルベルチュス》(1832)で過激なロマン派詩人の熱狂を示したが,小説《青年フランス派》(1833)でそうしたロマン派の青年像を戯画的に描くうちに,やがて熱狂もさめていった。さらに小説《モーパン嬢》(1835)の序文では,〈芸術至上主義〉を唱えて芸術の自律性を主張,文学の社会的効用を説くユゴーと決別した。詩人としての想像力・感受性・思想に欠けてはいたが,絵画的な形式美を表現する才能に恵まれていた。…

【唯美主義】より

… 19世紀以来の唯美主義は観念的美の世界と悪魔的な官能美への惑溺,すなわちデカダンスdécadenceの二極を絶えず往復しているが,これはスウィンバーンに影響を与えたフランスの文学者ゴーティエボードレールに始まる。前者は,いわゆる〈芸術至上主義〉,すなわち〈芸術のための芸術l’art pour l’art〉(命名は1845年,V.クーザンによる)の唱道者として知られ,効用性を超越した自律的な美を主張した。のちに彼は《文学的肖像と回想》(1881)で,様式としてのデカダンスを〈このうえない成熟に達した芸術であり,輪郭がきわめて曖昧(あいまい)でつかみにくいものを表現しようと格闘し,腐敗した情熱の死にぎわの告白や妄執のもたらす狂気寸前の幻覚を伝えようとするもの〉と定義,唯美主義の到達した極点を示した。…

※「芸術至上主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android