藤沢周平(読み)フジサワシュウヘイ

デジタル大辞泉 「藤沢周平」の意味・読み・例文・類語

ふじさわ‐しゅうへい〔ふぢさはシウヘイ〕【藤沢周平】

[1927~1997]小説家山形の生まれ。本名小菅留治こすげとめじ。不遇な下級武士や市井に生きる庶民を描いた時代小説で大ブームを巻き起こす。特に端正な文体で書かれた人情ものは絶大な人気を集めた。「暗殺の年輪」で直木賞受賞。他に「用心棒日月抄じつげつしょう」「蝉しぐれ」「隠し剣」シリーズなど。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「藤沢周平」の意味・わかりやすい解説

藤沢周平
ふじさわしゅうへい
(1927―1997)

小説家。山形県生まれ。本名小菅留治(こすげとめじ)。旧制山形師範卒業後、中学校教師、療養生活、業界紙の編集者を経て、1971年(昭和46)『溟(くら)い海』でオール読物新人賞、『暗殺年輪』(1973)で第69回直木賞を受賞。簡潔な文体で新しい時代小説家の地位を得、独自の芸術家小説の分野をも切り拓(ひら)く。『闇(やみ)の梯子(はしご)』(1974)、『用心棒日月抄(ようじんぼうじつげつしょう)』(1976)、『一茶(いっさ)』(1977)、『白き瓶(かめ)―小説 長塚節(たかし)』(1985。吉川英治文学賞)、『本所しぐれ町物語』(1987)、『蝉(せみ)しぐれ』(1988)、『市塵(しじん)』(1989。芸術選奨文部大臣賞)、『三屋清左衛門残日録』(1989)、上杉鷹山(ようざん)を描いた、周平の遺書ともよばれた長編『漆の実のみのる国』(1997)などがある。また、生前最後の作品集となった『日暮れ竹河岸(たけがし)』(1996)、最晩年の境地を伝える時代小説集『静かな木』(1998)や、エッセイ集として『小説の周辺』(1986)、『早春―その他』(1998)など、自伝として『半生の記』(1994)などがある。1994年(平成6)、『藤沢周平全集』全23巻(1992~94)をはじめとする時代小説を完成したことによって、93年度朝日賞を受賞している。同全集は、『漆の実のみのる国』と全集未収録の時代小説短編を収めた第24巻を、2002年に刊行し、全24巻となった。

[伊藤和也・磯貝勝太郎

『『藤沢周平短篇傑作選』全4巻(1981・文芸春秋)』『『小説の周辺』(1986・潮出版社)』『『藤沢周平全集』全24巻(1992~94、2002・文芸春秋)』『『暗殺の年輪』『闇の梯子』『一茶』『海鳴り』『白き瓶―小説 長塚節』『三屋清左衛門残日録』『半生の記』『蝉しぐれ』『漆の実のみのる国』『早春―その他』『日暮れ竹河岸』(文春文庫)』『『市塵』(講談社文庫)』『『用心棒日月抄』『用心棒日月抄 孤剣』『用心棒日月抄 刺客』『用心棒日月抄 凶刃』『本所しぐれ町物語』『静かな木』(新潮文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「藤沢周平」の意味・わかりやすい解説

藤沢周平
ふじさわしゅうへい

[生]1927.12.26. 山形
[没]1997.1.26. 東京
小説家。山形師範学校在学中から同人誌に寄稿を始めた。中学校に赴任するが,肺結核のため休職。療養中に俳誌『海坂』に投句。その後,業界紙の編集をするかたわら精力的な執筆活動を続け,1971年『溟 (くら) い海』で『オール讀物』新人賞を受賞。 73年『暗殺の年輪』で直木賞を受賞。いずれも死や運命をめぐる深く暗い情念が作品の根底を流れるといえる。連作短編集『用心棒日月抄』,長編小説『一茶』 (1978) ,『回天の門』 (79) ,『闇の傀儡師』 (80) などからはさまざまな境遇に生きる人間に向けた穏やかな視線が加わり,読者層も広がった。さらに『海鳴り』 (84) ,『蝉しぐれ』 (88) ,『三屋清左衛門残日録』 (89) では,青春時代から老境にいたる人間像を通し普遍的な人生のありさまを描き多くの共感を呼んだ。 86年『白き瓶-小説・長塚節』で吉川英治文学賞,89年一連の執筆活動に対し菊池寛賞,90年『市塵』で芸術選奨文部大臣賞,さらに 90年には「時代小説の完成」に対して朝日賞をそれぞれ受賞した。病の床で書き上げた『漆の実のみのる国』が遺作となった。

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百科事典マイペディア 「藤沢周平」の意味・わかりやすい解説

藤沢周平【ふじさわしゅうへい】

小説家。本名小菅留治(こすげとめじ)。山形県生れ。山形師範卒。中学校教員などを経て,1971年《溟(くら)い海》でオール読物新人賞,1973年《暗殺の年輪》で直木賞受賞。下級武士や庶民の視点から体制との葛藤を描き,冴えた小説技法によって一躍時代小説の人気作家となる。《隠し剣孤影抄》《用心棒日月抄》《蝉しぐれ》など。長塚節の伝記《白き瓶》で吉川英治文学賞。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「藤沢周平」の解説

藤沢周平 ふじさわ-しゅうへい

1927-1997 昭和後期-平成時代の小説家。
昭和2年12月26日生まれ。中学校教師,業界紙記者などをつとめる。昭和48年「暗殺の年輪」で直木賞。武家もの,市井ものを中心とした時代小説に下級武士や庶民の哀歓を端正な文体でえがき,人気作家となった。61年「白き瓶」で吉川英治文学賞,平成2年「市塵」で芸術選奨。上杉鷹山をえがいた「漆の実のみのる国」が絶筆となった。平成9年1月26日死去。69歳。山形県出身。山形師範卒。本名は小菅留治。作品はほかに「用心棒日月抄」「海鳴り」「蝉しぐれ」「本所しぐれ町物語」など。

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