知恵蔵2010の解説
2001年、司法制度改革審議会意見書が、裁判に国民の健全な社会常識を反映させ、司法の国民的基盤を確立するために、刑事裁判への国民参加を図る裁判員制度の導入を提言したことを受けて、04年3月、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」案が内閣によって国会に提出され、一部修正のうえ、同年5月に成立・公布された。同法は09年5月までの間に施行される。対象となるのは、地方裁判所で審理される(1)死刑または無期懲役・禁固にあたる罪、(2)1年以上の懲役・禁固にあたる罪であって故意の犯罪行為により人を死亡させた罪に係る事件。裁判を行う合議体は、原則として、裁判官3人と裁判員6人で構成されるが、公訴事実について争いがなく、事件の内容等から適当と認められる場合には、訴訟当事者に異議がない限り、裁判官1人と裁判員4人で裁判を行うことができる。事実の認定、法令の適用及び量刑について、裁判官と裁判員が合議を行い、裁判員にも職権の独立や証人尋問などの権限が認められる。評決については、裁判官及び裁判員の双方を含む合議体の多数決によるとされ、裁判官または裁判員のみによって有罪の判断を行うことはできない。裁判員選任資格を有するのは、20歳以上の有権者であるが、三権分立等の観点から国会議員など一定の職にある者は裁判員に就くことができず、また被告人や被害者の親族など不公平な裁判をするおそれがあると認められる者も除かれる。裁判員等は、法令に従って公平誠実に職務を行わなければならないほか、評議の経過など職務上知り得た秘密を漏らしてはならない等の義務を負う。裁判員の守秘義務や個人情報の保護等については、報道の自由にかかわる問題でもあり、公正な裁判と国民の知る権利の両者に配慮した適正な運用が求められている。
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土井真一京都大学大学院教授
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出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2007」
裁判員制度とは、有権者からくじで選ばれた市民が重大な刑事事件の裁判に参加し、被告が有罪か無罪か、有罪の場合は刑の重さをどれくらいにするかを決める制度。健全な社会常識を刑事裁判に反映させる仕組みとして2001年に司法制度改革審議会が導入を提言したことを受けて、04年に「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立。09年5月までにスタートする予定だ。 裁判員6人が裁判官3人と一緒に審理する(争いがない場合は裁判員4人と裁判官1人でも可能)。殺人、傷害致死、強盗致死傷、現住建造物等放火、危険運転致死などの事件が対象で、06年の場合は全国で3111件。裁判員候補者として裁判所に行く人は、年間で有権者300〜600人に1人、実際に裁判員(または補充裁判員)として裁判に参加する人は、年間で有権者3500人に1人程度と見込まれている。 市区町村選挙管理委員会の選挙人名簿からくじで、毎年12月ごろに翌年1年間の裁判員候補者名簿が作成される。候補者には調査票が届き、裁判員になれない理由や辞退できる理由があるかどうかを回答する。 具体的な事件の審理日程が決まると6週間前に呼び出し状と、当日の都合などを尋ねるための質問票が届く。初公判の日の午前中に裁判長から面接を受け、辞退を認めるかどうかや、不公平な裁判をする恐れがないかなどを判断されたうえで、最終的にくじで裁判員が選ばれる。 裁判員には、1万円を上限に日当が支払われる。公判は連日のように開かれ、7割程度の事件が3日以内で終わる見通しだ。 評議を尽くしても意見が一致しなかった場合は9人の多数決で結論を決める。ただし、有罪の判断をするためには裁判官1人以上が賛成する必要がある。 裁判員の負担を考えると、これまでの裁判に比べて審理を大幅に短縮することが求められる。まず「公判前整理手続き」を活用して初公判前に争点を絞り込むことが重要になるほか、公判では検察官と弁護人が素人にも分かりやすい立証を心掛け、裁判官も手続きや用語を裁判員に分かりやすく解説する必要がある。裁判員が自由に意見を言えるよう、非公開の評議の場では裁判官が結論を誘導しないことも大切だ。 裁判員の負担軽減のため、審理が長くかかる大型事件は分割して審理する「部分判決」の導入も決まった。例えば3件の殺人について起訴された被告の裁判では、裁判所は1件ごとに裁判員を6人ずつ、計18人選ぶ。裁判員と一緒に審理する裁判官3人は交代せず、全事件を担当する。裁判員は、それぞれの担当事件だけを審理して「有罪か無罪か」を判断する。最後の1件を審理した裁判員は、担当事件の有罪無罪を判断することに加え、先の2件の結果も踏まえて、有罪ならば被告の量刑の判断も行う。ただ、最後の事件の裁判員の負担が大きく、また裁判官と裁判員の間に「情報の格差」が生まれるなどの懸念の声も出ている。 裁判員候補者の辞退をどこまで認めるかも大きな課題だ。裁判員法は70歳以上の人や学生、重い病気や傷害のある人、親族の介護や養育の必要がある人などの辞退を認める。「自分が処理しなければ事業に著しい損害が出る恐れがある場合」や「父母の葬式など社会生活上の重要な用務がある場合」も辞退できる。思想・信条に基づく辞退を認めるかどうかも焦点だ。 裁判員は評議の経過について守秘義務を課せられるが、報道の自由との兼ね合いが問題として残る。また、各種調査では参加に消極的な意見が少なくないことから、法曹三者は制度への理解をより一層求める努力をする必要がある。
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岩田清隆朝日新聞記者
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出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2008」
デジタル大辞泉の解説
さいばんいん‐せいど〔サイバンヰン‐〕【裁判員制度】
衆議院議員の選挙人名簿の中から無作為に選ばれた候補者から、裁判所の選任手続きを経て選出された裁判員が、刑事裁判に参加し、裁判官とともに無罪・有罪を決め、有罪の場合は量刑を行う日本の裁判制度。平成21年(2009)5月21日から施行。地方裁判所で審理する、死刑または無期懲役・禁固にあたる重大な犯罪(殺人・傷害致死・危険運転致死など)に適用される。事件ごとに6名の裁判員が選任され、3名の裁判官とともに公判を担当する。→裁判員
◆市民が裁判に参加する制度として、諸外国では陪審制度と参審制度がある。陪審制度は英国・米国などで採用されており、事件ごとに無作為に選任される陪審員のみで有罪・無罪の判断を行い、量刑は裁判官が行う。参審制度はドイツ・フランス・イタリアなどで採用されており、任期制で選ばれた参審員が、裁判官と共同で有罪・無罪および量刑の判断を行う。日本の裁判員制度は、裁判員が事件ごとに無作為に選任される点では陪審制度に近いが、裁判員が裁判官と共同で犯罪事実の認定と量刑を行う点では参審制度に近い。
朝日新聞掲載「キーワード」の解説
百科事典マイペディアの解説
市民が重大な刑事事件の審理に参加して,裁判官とともに被告の有罪・無罪や量刑を決める制度。2004年成立の裁判員法にもとづく。2009年5月までに実施される。司法制度改革の一環として裁判を身近で分かりやすいものにし,司法に対する国民の信頼を向上させることを目的とする。
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