西田天香(読み)にしだてんこう

精選版 日本国語大辞典 「西田天香」の意味・読み・例文・類語

にしだ‐てんこう【西田天香】

宗教家本名、市太郎。滋賀県出身。求道の放浪生活うちに悟りをひらき、京都鹿ケ谷に一灯園開設、光明祈願による新生活を提唱した。第二次大戦中には国策を支持し、海外にも布教した。明治五~昭和四三年(一八七二‐一九六八

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「西田天香」の意味・わかりやすい解説

西田天香
にしだてんこう
(1872―1968)

宗教家。本名市太郎。滋賀県長浜の紙問屋に生まれる。1891年(明治24)兵役を逃れるため北海道に移住し、開墾事業の監督となったが、小作農民と資本家の対立に挟まれて行き詰まり、3年余で求道(ぐどう)の放浪生活を始めた。1903年(明治36)トルストイの『わが宗教』に啓発され、禁欲奉仕内省の信仰生活に入った。1905年、断食中に乳児の泣き声を耳にして、人生の理想は赤子のように無心になることと悟り、京都鹿(しし)ヶ谷(たに)に一燈園(いっとうえん)を開き、のち山科(やましな)に移った。一燈園では托鉢(たくはつ)・奉仕・懺悔(ざんげ)の共同生活を営み、財団法人光泉林(こうせんりん)(現、一般財団法人懺悔奉仕光泉林)、すわらじ劇園などを設立した。西田は光明祈願による新生活を提唱し、政治・外交・社会運動についても活発に発言して、国策を支持した。第二次世界大戦後の1947年(昭和22)参議院議員となり、ガンジーの非暴力主義と世界連邦思想に共感を示した。

村上重良 2018年6月19日]

『『西田天香選集』全5巻(1967~1971・春秋社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「西田天香」の意味・わかりやすい解説

西田天香 (にしだてんこう)
生没年:1872-1968(明治5-昭和43)

宗教的社会活動家。滋賀県長浜市の紙問屋に生まれた。本名は市太郎。小学校卒業後,1889年18歳のとき滋賀県知事大越亨に面談,その二宮尊徳報徳思想に共感し,2年後兵役を免れるため北海道開拓民として移住。開墾事業の監督となったが,資本家と小作人の間の紛争調停に苦しみ,のち数年間懐疑と求道の放浪生活を続けた。1905年長浜愛染堂で断食中,乳児の泣声に無心の境を悟り,同年京都鹿ヶ谷(ししがたに)に〈一灯園〉を開設,懺悔生活を始め,〈おひかり〉による内面的救済を求め,無所有の共同生活をめざした。一灯園はのち京都山科に移り,本部光泉林,諸学校施設などをもち,多数世帯の大家族的生活が実践されている。27年中国金州に開拓農場を作り,中国,朝鮮,ハワイ,北アメリカへも布教した。47年第1回参議院議員選挙で全国区に当選,緑風会の結成に参加した。教話集《懺悔の生活》(1921)は大正期にベストセラーとなった。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「西田天香」の解説

西田天香
にしだてんこう

1872.2.10~1968.2.29

修養団体一灯園の創始者。本名市太郎。滋賀県出身。生家は真宗大谷派の檀家。1892年(明治25)に二宮尊徳「報徳記」の影響をうけて北海道開拓事業に参加するが挫折。1905年故郷での修行をもとに,他家の便所掃除を行うことで自己を生存競争の最下位に位置づける六万行願という奉仕活動を始める。06年天香に共鳴する婦人たちの集団を一灯会と命名。13年(大正2)京都で一灯園献堂式。自著「懺悔の生活」の出版活動・演劇活動・教育活動を行う。47年(昭和22)に国民総懺悔を唱え,参議院に全国区で当選した。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「西田天香」の解説

西田天香 にしだ-てんこう

1872-1968 明治-昭和時代の宗教家。
明治5年2月10日生まれ。トルストイの「我が宗教」に啓発され,明治38年京都に一灯園をひらく。托鉢(たくはつ)・奉仕・懺悔(ざんげ)の生活にはいり,のち財団法人光泉林や,すわらじ劇園などを設立した。昭和22年参議院議員となり,緑風会結成に参加。昭和43年2月29日死去。96歳。滋賀県出身。本名は市太郎。著作に「懺悔の生活」。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「西田天香」の意味・わかりやすい解説

西田天香
にしだてんこう

[生]明治5(1872).2.10. 長浜
[没]1968.2.29. 京都
宗教家。本名は市太郎。求道の放浪生活を送ったのち,無所有無一物を信条とする内省と隣人への奉仕の生活に入り,1913年京都市左京区鹿ヶ谷に宗教道場「一灯園」を創設,同信者と共同生活を行なった。第2次世界大戦後参議院議員。主著『懺悔の生活』 (1921) 。

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世界大百科事典(旧版)内の西田天香の言及

【一灯園】より

…京都市山科区にある修練道場。1905年(明治38)西田天香が創始した。天香の〈懺悔の心〉に基づき,〈無所有奉仕〉の生活を行う集団で,自己の内部に世間の苦悩の責任を体感し,自然にかなった生活をすれば,一物を所有せず,働きを金銭に換えなくても,許されて生きられるとする。…

※「西田天香」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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