議政官(読み)ギセイカン

デジタル大辞泉 「議政官」の意味・読み・例文・類語

ぎせい‐かん〔‐クワン〕【議政官】

明治初期の立法機関。慶応4年(1868)閏4月設立。上局・下局で構成されたが、有効な機能を果たせずに翌年5月廃止。

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精選版 日本国語大辞典 「議政官」の意味・読み・例文・類語

ぎせい‐かん ‥クヮン【議政官】

〘名〙 明治初年の立法機関。慶応四年(一八六八設置。上局と下局に分かれ、上局は皇族公卿諸侯で構成する議定、および士族庶民をも加えた参与からなり、下局は貢士(こうし)からなる。
西洋事情(1866‐70)〈福沢諭吉〉二「刑法官議政官為政官の如きは」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「議政官」の意味・わかりやすい解説

議政官
ぎせいかん

明治初年の立法機関。1868年(慶応4)閏(うるう)4月21日、維新政府は五か条の誓文の精神に基づいて政体書公布太政官(だじょうかん)を復興するとともに、三権分立の方針を明らかにし、立法機関として議政官を設置した。議政官は上局(じょうきょく)と下局(かきょく)から構成されており、重要な布告法制などは議政官の決定をまって行政官が布達することとなっていた。上局は、上級廷臣、諸侯などからなる議定と、下級廷臣、西南雄藩の有力藩士からなる参与により構成され、下局は、各藩から選出された貢士(こうし)を構成員としていた。議定、参与の多くは行政官を兼任していたので、上局は半年足らずで消滅した。5月28日下局は貢士対策所として実施され、翌69年(明治2)5月13日に議政官が廃止されたあと、その任務公議所集議院へと引き継がれた。

[井上 勲]

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百科事典マイペディア 「議政官」の意味・わかりやすい解説

議政官【ぎせいかん】

1868年の政体書により,三権分立の立法府として議定・参与の上局と各府県藩選出の貢士(こうし)を議員とする下局に分かれ,太政官中に設置された。しかし議定・参与の行政への関与は不可避で行政官との区別が不確実となり,1869年廃止。下局は公議所を経て集議院に再編成。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「議政官」の解説

議政官
ぎせいかん

明治初年の政府の立法諮問機関。1868年(明治元)閏4月,政体書の発布により太政官の権力を立法・行法(行政)・司法にわけ,立法をつかさどる機関として設置された。上局と下局にわかれる。上局は議定(ぎじょう)・参与らにより構成され,政体の創立,法制の造作,条約の締結,宣戦・講和などについて審議する。下局は議長を行政官の弁事が兼任し,各府県・諸藩から差しだした貢士を議員として,上局の命をうけ,租税制度,貨幣の鋳造,条約の締結,宣戦・講和などについて審議するものとされた。しかし実際には議政官の上局は行政官と一体化し,立法諮問機関としての機能を発揮しないまま68年9月に廃止され,69年4月いったん復活したが,5月に廃止となった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「議政官」の意味・わかりやすい解説

議政官
ぎせいかん

慶応4 (1868) 年閏4月,政体書の発布による太政官制の創設の際できた立法機関をいう。上下両局に分れ,上局に議定参与とがあったが,立法と行政との機能的分離ができずほぼ半年後の明治1 (68) 年9月 19日廃止された。

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旺文社日本史事典 三訂版 「議政官」の解説

議政官
ぎせいかん

明治初期の立法機関
1868年政体書により設置。議定・参与をもって組織された上局と,貢士をもって組織された下局に分かれる。上局のおもな役目は諸侯間・公家間の対立の調停であり,下局は上局の下級諮問機関。行政官に圧倒され半年で廃止された。

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世界大百科事典(旧版)内の議政官の言及

【貢士】より

…貢士はいわば藩の代表として議事に参加するわけであるが,才能によっては徴士に昇格することもあった。同年閏4月21日政体書が発布され,議政官が設けられ,上局・下局が設けられると参与でもあった徴士は議定とともに上局を構成し,下局は議長2名のほか貢士を議員として構成された。下局は上局の命を受け租税,駅逓,造幣,度量衡,条約,通商,拓彊,宣戦講和,警察,軍事,各藩間の訴訟を扱ったが,立法機関としての独自性は弱かった。…

【太政官】より

…神祇官は,官庁の名称は同じ〈官〉であるが,これも統轄下に置かれていた。その組織は,議政官組織,少納言局,左右の弁官局の三つからなる。 (1)議政官組織を構成する官職は太政大臣(定員1,ただし本来は具体的な職掌をもたない天子輔導の官),左大臣・右大臣(各定員1),大納言(定員4,のち2となる)だが,8世紀はじめに令外官(りようげのかん)の中納言(定員3)と参議(はじめ定員なし,9世紀から8となる)が加わり,平安時代にさらに内大臣が加わった。…

※「議政官」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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