象谷塗(読み)ぞうこくぬり

精選版 日本国語大辞典 「象谷塗」の意味・読み・例文・類語

ぞうこく‐ぬり ザウコク‥【象谷塗】

〘名〙 江戸末期、讚岐国(香川県)の漆工玉楮象谷(たまかじぞうこく)が、創始した漆塗技法弁柄を混ぜた漆を塗り、その上に黒漆を塗る。さらに文様色漆で塗って真菰(まこも)の粉をかけて仕上げる。讚岐彫

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デジタル大辞泉 「象谷塗」の意味・読み・例文・類語

ぞうこく‐ぬり〔ザウコク‐〕【象谷塗】

江戸末期の漆工、玉楮象谷たまかじぞうこくが、タイ蒟醤キンマ中国存星ぞんせいなどの漆器を独自に消化して創始した塗り物。中塗りの上に草花などを彫刻し、青・黄・紅などの色漆をつめて研ぎ出し、仕上げ塗りをしたもの。高松市名産

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百科事典マイペディア 「象谷塗」の意味・わかりやすい解説

象谷塗【ぞうこくぬり】

四国高松藩の漆芸家,玉楮(たまかじ)象谷〔1807-1869〕が創案した漆工芸。タイの蒟醤(きんま),中国の存星などの技法に基づき,籃胎素地(らんたいきじ)の漆器の表に文様を彫り,色漆で充填(じゅうてん)したもの。象谷は,鞘(さや)塗師藤川理右衛門の子で,高松の漆工芸の発達に貢献。代表作に《蒟醤塗料紙硯箱》《忘れ貝彫漆香合》がある。

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世界大百科事典(旧版)内の象谷塗の言及

【香川[県]】より

…高松市を中心とした讃岐漆器は幕末に玉楮象谷(たまかじぞうこく)によって創始され,高松藩の保護下に発展,その伝統を生かした高級品志向で着実な地歩をえ,1976年伝統的工芸品の国指定を受けた。象谷塗,きんま,後藤塗など特殊技法を駆使し,人間国宝を何人も生み出している。一方,中世から手すき和紙の伝統をもち,大正時代から近代製紙工場になった高松の製紙業は不振である。…

【存星】より

…日本では遅くとも16世紀初めには堆朱(ついしゆ)や鎗金の器とともに舶載されており,《君台観左右帳記》に〈存星〉の記載があり,沈金に似たものでまれである,と説明を加えている。日本で存星を模した作品がつくられるのは江戸時代で,玉楮象谷(たまかじぞうこく)が独自に工夫して象谷塗として広めた。【中里 寿克】。…

【玉楮象谷】より

…1830年(天保1)藩主松平頼恕(よりひろ)より製作を命ぜられて以来,松平家に仕え,玉楮の姓を授かった。藩を代表する漆芸品として,将軍や大名への進物に利用されるなど名声を博し,また象谷塗,讃岐彫とよばれたその作品は,今日の香川漆器の源流となった。【郷家 忠臣】。…

※「象谷塗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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