貸借対照表(読み)タイシャクタイショウヒョウ(英語表記)balance sheet

翻訳|balance sheet

デジタル大辞泉 「貸借対照表」の意味・読み・例文・類語

たいしゃく‐たいしょうひょう〔‐タイセウヘウ〕【貸借対照表】

損益計算書キャッシュフロー計算書とともに財務諸表の中心をなすもので、一定時点における企業の財政状態を明らかにするために作成される計算書。すべての資産・負債・資本の有り高を記載し、一覧できるように表示したもの。バランスシート。B/S。

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精選版 日本国語大辞典 「貸借対照表」の意味・読み・例文・類語

たいしゃく‐たいしょうひょう ‥タイセウヘウ【貸借対照表】

〘名〙 特定時点における企業の財政状態を、資産と負債および資本とに対照表示したもの。損益計算書とともに最も重要な財務表の一つで、開業貸借対照表、閉業貸借対照表、清算貸借対照表決算貸借対照表中間貸借対照表などがある。バランスシート。

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改訂新版 世界大百科事典 「貸借対照表」の意味・わかりやすい解説

貸借対照表 (たいしゃくたいしょうひょう)
balance sheet

一定時点における企業の財政状態あるいは財産状態を表示する財務諸表の一つである。そこでの財政状態は,企業に投入された資金の使途(資産)と源泉(負債および資本),あるいは企業による資金投下の回収・未回収状態(資産)と投下資金の源泉(負債および資本)との表示を意味するものと解されている。財産状態は,商法計算書類規則(〈財務諸表〉の項参照)では,貸借対照表が財産の状態を表示するものとしているが,含まれる項目からすれば財政状態と解されるべきである。会計理論上,財産状態は,静的貸借対照表観,すなわち,債権者保護の思想に基づいて一定時点で換金できる積極財産,返済すべき消極財産および両財産の差額としての純財産の表示をもって貸借対照表の役割とみる見方をとった時期に貸借対照表が表現するものをいうとされる。

 これに対して動的貸借対照表観,すなわち,期間損益計算を可能とするために収支計算と費用収益計算との期間的ずれを調整する役割を貸借対照表の役割とする見方をとるときに,貸借対照表は財政状態を表示するものとされる。

貸借対照表には作成目的により,静的貸借対照表,動的貸借対照表および損益計算目的と資金計算目的とを有機的に結合させる運動貸借対照表などがある。作成時期によれば,開業時に作成する開業貸借対照表,会社の清算に際して作成される清算貸借対照表,通常の各決算期末に作成される決算貸借対照表,各決算期間の途中で作成される中間貸借対照表がある。通常,貸借対照表といわれるものは,動的貸借対照表としての決算貸借対照表である。

貸借対照表は,しばしばバランス・シートといわれる。バランスには2種の意味がある。一つは平均であり,他は残高である。これは,貸借対照表の性質のみならず作成方法をも示唆する。平均表としての貸借対照表は静的貸借対照表観のもとで財産状態を表示する。そのため作成方法は,積極財産を実地に調査(すなわち実地棚卸)してその数量と金額を一つ一つ計算し,財産目録の左側に記載し,消極財産も一つ一つ確定して右側に記載する。そして,左右を平均させるために左右の差額を少ない側に加えるという方法がとられた。この表は財産目録であるが,これの要約表が貸借対照表とされた。そのため,このような貸借対照表の作成方法は財産目録法あるいは棚卸法といわれる。

 これに対して,残高表としての貸借対照表は,継続的に企業の経営活動を取引として記録し,期末に決算のための整理を行ったうえ,まず,費用および収益項目によって損益計算書を作成し,残った項目とその残高をもって貸借対照表を作成する方法である。したがって,費用収益と無関係な項目とともに,当該期間では無関係な項目であって将来期間に収益費用となる項目が含まれることになる。このことから,この作成方法による貸借対照表は現在の損益計算を可能にし,将来の損益計算をも可能にさせる連結環であるといわれる。また,帳簿記録された取引と決算での整理記入から導き出されるため,この方法は誘導法といわれる。

現時点で要請されている財務諸表規則および商法計算書類規則による貸借対照表は,いずれも動的貸借対照表としての決算貸借対照表であり,明りょう性の原則のもとで資産は流動資産,固定資産および繰延資産に,負債は流動負債および固定負債に区分されて記載される。資本については,財務諸表規則では,資本金,資本準備金,利益準備金およびその他の剰余金とする。ところが,商法計算書類規則では,資本は資本金,法定準備金(下位の区分として資本準備金と利益準備金を示す)および剰余金に区分する。

 また,財務諸表規則では,資産を左側に,負債および資本を右側に示すいわゆる勘定式によらず,資産の次に負債を,そして資本を示すという報告式が採用されている。商法計算書類規則はいずれとも規定していないため,一般的には旧来の勘定式がとられることが多い。なお,財務諸表規則では,貸借対照表は1000円単位で表示でき,規模が大きく,かつ誤解を与えるおそれがなければ100万円単位で作成できる。商法計算書類規則では,公告すべき要約貸借対照表については100万円未満を切り捨て,大会社(資本の額が5億円以上または負債の合計額が200億円以上の会社)の公告すべき要約貸借対照表は100万円未満または1億円未満の端数を切り捨てて表示できるものとしている。表では,商法計算書類規則による様式を勘定式で示そう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「貸借対照表」の意味・わかりやすい解説

貸借対照表
たいしゃくたいしょうひょう
balance sheet

企業の一時点の資産、負債、純資産(資本)または持分の一覧表。損益計算書、キャッシュ・フロー計算書とともに財務諸表とよばれる。英語表記の略称でBSともいう。

 貸借対照表は、その作成時点の違いにより分類される。開業時に作成されるものを開業貸借対照表と、解散時に作成されるものを清算貸借対照表とよぶが、一般的には継続企業を前提とした決算時に作成される決算貸借対照表を意味するのが普通である。

 貸借対照表の形式については二つある。一つは簿記の勘定と同様に、左側(借方)に資産を記載し、右側(貸方)に負債と資本を記載する形式であり、勘定式とよばれる。もう一つは垂直的に資産、負債、資本の順番で記載する形式であり、報告式とよばれる。報告式は、会計の知識の乏しい者にも理解しやすいので、実務上はこちらが用いられている。

 貸借対照表の本質については二つの見方がある。一つは、貸借対照表を平均表とみる見方であり、これに基づけば、貸借対照表は資産と負債を収容し、両者の差額として計算された金額を資本として計上することで貸借が平均する。もう一つは、貸借対照表を残高表とみる見方である。これに基づけば、複式簿記で作成される残高試算表からまず収益と費用を抜き出して損益計算書が作成され、残った資産、負債、資本の各勘定の残高を収容するものである。

 貸借対照表の作成方法については二つの方法がある。一つは棚卸法であり、この方法では期末に実地棚卸を行いその存在が確認された資産と負債を計上し、両者の差額として資本を計上する。もう一つは誘導法であり、この方法ではすべての取引を記録した会計帳簿から貸借対照表が作成されることになる。

 貸借対照表を作成する目的については二つある。一つは企業の財産の状態を計算表示することを貸借対照表の目的と解するものであり、静態論とよばれている。この立場でも、貸借対照表にどのような資産や負債を計上するのか、また、資産や負債にどのような金額を付すのかについていくつかの解釈がある。もう一つは会計の目的を企業の期間損益計算ととらえ、期間計算との関係において貸借対照表の目的を解釈しようとするものであり、動態論とよばれている。この立場によれば、貸借対照表は、収入、支出、収益、費用の発生の期間的なずれを収容する単なる残高表を意味する。

 企業会計の目的を適正な期間損益計算に置く伝統的な考え方では、貸借対照表が示す財政状態とは、どこからいくらの資金が調達され(負債および資本)、それが何にいくら使われているか(資産)、すなわち資金の調達源泉とその運用形態のことを意味していると解されてきた。しかし、今日では貸借対照表は、企業が行っている投資のポジション(資産と負債の現在の状態)を表しているという解釈が有力になってきている。

[万代勝信]

『カール・ケーファー著、安平昭二・郡司健訳『ケーファー 簿記・貸借対照表論の基礎』(2006・中央経済社)』

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百科事典マイペディア 「貸借対照表」の意味・わかりやすい解説

貸借対照表【たいしゃくたいしょうひょう】

バランス・シート。特定の会計期間の期末における企業の財務状態を表す計算書類。借方に資産,貸方に負債および資本を表示する。企業が現に投下している資金の調達源泉とその個別具体的な運用状況を一覧できる。複式簿記の採用を前提とし,残高試算表から誘導的に作成。
→関連項目運転資本企業会計原則計算書類原価計算財産目録財務諸表自己資本資産資産再評価商業帳簿総勘定元帳他人資本低価主義負債

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「貸借対照表」の意味・わかりやすい解説

貸借対照表
たいしゃくたいしょうひょう
balance sheet

財務諸表の一つ。一定時点における企業の財務状態を表示する書類。バランスシートともいう。作成の時期,目的により通常貸借対照表(開業,決算期)と非常貸借対照表(清算,破産,会社更生,合併など)とに分かれる。両者は資産評価の基準が異なる。従来,日本の商法は財産目録から貸借対照表を導き出す立場(棚卸法)をとっていたが,企業の組織が複雑化するにしたがい,棚卸法で貸借対照表を作成することはほとんど不可能になった。そこで 1974年の商法改正で貸借対照表は会計帳簿に基づいて作成すべきものとされ,誘導法が採用された。貸借対照表は会社計算規則により規制されている(会社計算規則72~86)。株式会社の貸借対照表は取締役が作成するべきもので,取締役は,監査役の監査を経たのちに,定時株主総会の期日 2週間前よりこれを本店および支店(写し)に備え,株主および会社債権者の閲覧に供しなければならない(会社法442)。定時総会の承認を得れば,すみやかに官報,日刊新聞紙上に公表またはインターネット上で開示(電子公告)されるべきとされる。上場会社や資本金 5億円以上でかつ株主数が 500人以上の会社(金融商品取引法〈24条1項〉で有価証券報告書の提出が義務づけられている会社)は,前述の公表が免除される(会社法440条4項)。

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知恵蔵 「貸借対照表」の解説

貸借対照表

決算時点など、ある一時点での企業の財務状態(資金の調達源泉と運用形態)を表すもの。損益計算書と並んで重要な財務諸表。毎年の決算日(多くの場合3月31日)をその区切りとする。資金の調達源泉、すなわちお金を誰に出してもらったか、あるいは誰にお金を返さなくてはならないかということを右側(貸方)、資金の運用形態、すなわちお金を何に使ったか、を左側(借方)に記入する。さらに右側の部分は返済が必要な部分とそうでない部分とに分かれる。右側で、返済の必要があるものは負債、その必要のないものは資本と呼ぶ。左側の部分は資産と呼び、企業の財産を表す。このように貸借対照表は、資産、負債、資本の3つの部分に大きく分けられる。これに関連して、資産=負債+資本という貸借対照表等式が成り立つ。この式は、会計の計算構造を恒等式として表す、重要な基本式である。

(小山明宏 学習院大学教授 / 2007年)

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株式公開用語辞典 「貸借対照表」の解説

貸借対照表

貸借対照表[たいしゃくたいしょうひょう]とは、一定時点における企業の財政状態を示す一覧表のこと。バランスシートともいう。企業の「資産」と「負債」「資本」を対照表示することによって、企業の財政状態を明らかにする報告書である。資金の調達源泉と、資金の用途が記されている。貸借対照表は、資産、負債、資本の分析をすることで、企業の安全性や手元流動性を判断することができる。「損益計算書」、「キャッシュフロー計算書」、「株主資本等変動計算書」等をあわせたものを、財務諸表と呼ぶ。

出典 株式公開支援専門会社(株)イーコンサルタント株式公開用語辞典について 情報

ブランド用語集 「貸借対照表」の解説

貸借対照表

貸借対照表とは決算期日における企業の財務状態を示す計算書類のことをいう。資産の部、負債の部、資本の部からなる。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「貸借対照表」の解説

貸借対照表

財務諸表のひとつ。資産・負債・資本を一覧表にして、会社の財政状態を表すもの。

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世界大百科事典(旧版)内の貸借対照表の言及

【財務諸表】より

…企業の経営活動を貨幣価値によって記録計算し,一定期間の企業努力とその成果(経営成績),期間末で企業が所有する資産,負っている負債および企業の資本の在高(財政状態)などを明らかにするための報告書をいう。
[種類]
 大蔵大臣の諮問機関である企業会計審議会によって,一般に公正妥当なものとして認められる会計原則(企業会計原則)が公表されているが,それによれば,財務諸表には,(1)損益計算書,(2)貸借対照表,(3)財務諸表付属明細表,(4)利益処分計算書が含まれている。損益計算書は経営成績,貸借対照表は財政状態,財務諸表付属明細表は損益計算書および貸借対照表における重要な項目の内訳明細あるいは変化の状態,利益処分計算書は株主総会の決議によって当該期間の利益の処分の結果を表示するものである。…

【資本】より

…所得獲得手段としての資産のなかには,たとえば貸付けに基づいて生じる債権のように生産要件としての実物と直接に対応しないものもあるから,二つの資本概念は一つのものの異なる2面であるとは単純にはいえない。しかしもし債権債務関係に関して閉じた社会を考えれば,一つの債権に対して必ずそれと同額の債務があるから,社会全体の貸借対照表を統合すれば債権と債務はすべて相殺し合い,所得獲得手段としての資産の総価値額と生産要件としての実物の総価値額とは一致する。このように,一つの閉じた社会を全体としてみれば,二つの資本概念は一つのものの異なる2面であるといえる。…

【流動資産】より

…ただし,受取手形,売掛金のような受取勘定のうち,破産債権,更正債権およびこれに準ずる債権で1年以内に回収されないことが明らかなものは,固定資産とされる。 後者の基準は営業循環過程外の資産に対して適用され,それによれば,貸借対照表日の翌日から起算して,1年以内に現金化される予定の資産はすべて流動資産とされる。すなわち,具体的には取引所の相場のある有価証券で一時所有目的のもの,1年以内に満期日の到来する預貯金,1年以内に期限の到来する貸付金,未収金等は流動資産である。…

※「貸借対照表」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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