転化糖(読み)てんかとう(英語表記)invert sugar

翻訳|invert sugar

精選版 日本国語大辞典 「転化糖」の意味・読み・例文・類語

てんか‐とう テンクヮタウ【転化糖】

〘名〙 ぶどう糖と果糖の等量混合物蔗糖加水分解すると得られる。この反応前後旋光性が右から左へ移るので、転化という名がついた。蜂蜜に多量に含まれている。蔗糖とは異なった味があり、甘味も強いために、菓子食品製造に使用される。〔稿本化学語彙(1900)〕

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デジタル大辞泉 「転化糖」の意味・読み・例文・類語

てんか‐とう〔テンクワタウ〕【転化糖】

転化2によって得られる、ぶどう糖と果糖との等量混合物。甘味が強く、吸収されやすい。

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改訂新版 世界大百科事典 「転化糖」の意味・わかりやすい解説

転化糖 (てんかとう)
invert sugar

ショ糖を酸あるいは酵素を用いて加水分解して得られるブドウ糖と果糖が1対1に含まれる糖。ショ糖は,ブドウ糖と果糖が1分子ずつ結合してできているが,この結合は,酸や酵素(インベルターゼ)によって容易に分解されて,ショ糖1分子からブドウ糖,果糖が1分子ずつ生成する。この反応を転化と呼び,得られる糖が転化糖である。転化糖は甘みが強くショ糖の1.2~1.3倍あり,また吸湿性があり砂糖結晶化を妨げる性質をもっている。日本で使われている砂糖のうち上白糖,中白糖は,しっとりとした感じと甘みを与えるために1~2%の転化糖を添加してある。また転化糖の添加は,砂糖の微細結晶が固結することを防ぐ作用ももっている。このような性質を利用して,転化糖は液状糖原料として用いられるほかに,製菓原料としても広く使われている。これは菓子の甘さにこくをつけたり,製品の乾燥を防止する作用があるためである。

 ショ糖が非還元糖であるのに対し,ブドウ糖と果糖の混合物である転化糖は還元糖であるので,加熱中の着色などの反応はおこりやすい。製造法はまったく異なるが,糖組成から考えると転化糖は異性化糖に近いということができる。また,はちみつ糖類大部分は転化糖である。
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化学辞典 第2版 「転化糖」の解説

転化糖
テンカトウ
invert sugar

スクロース(+66.5°)を希酸や酵素で加水分解すると,D-グルコース(+52.6°)とD-フルクトース(-92.8°)の混合物になる.その際,旋光度が右旋性から左旋性(-20°)に転じるので,この変化を転化(inversion),生成した糖混合物を転化糖という.スクロースと異なる味を与え,結晶化しにくいが吸収されやすいので,滋養剤,調味料など食品製造に使用される.ハチミツは60~90% の転化糖を含む.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「転化糖」の意味・わかりやすい解説

転化糖
てんかとう
invert sugar

ショ糖の加水分解を転化と呼び,ショ糖の転化によってできるグルコースとフルクトースの等量混合物のことを転化糖という。右旋性のショ糖を加水分解すると,生じるフルクトースの左旋性のほうがグルコースの右旋性より強いので,混合物の旋光度は左旋性となる。旋光性が右から左に転じた糖の意味からこのように呼ばれる。ショ糖は還元性をもっていないが,転化糖は還元性を示す。甘味料として菓子類,食品の製造に使用される。

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百科事典マイペディア 「転化糖」の意味・わかりやすい解説

転化糖【てんかとう】

転化

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栄養・生化学辞典 「転化糖」の解説

転化糖

 ショ糖を加水分解したもの,もしくはグルコースとフルクトースの等量混合物.

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