迦陵頻伽(読み)かりょうびんが

精選版 日本国語大辞典 「迦陵頻伽」の意味・読み・例文・類語

かりょうびんが【迦陵頻伽】

〘名〙
① (kalaviṅka の音訳。頻伽などと略称。好声と訳する) 仏語。雀や鴫(しぎ)などに類する鳥といわれ、また、インドのブルブルという鳥ともいわれる。極楽浄土にいるといい、顔は美女のようで、その声が非常に美しいところから、仏の声を形容するのに用いられる。伽鳥。かりょうびん。かりょうびかちょう。かりょうびんがちょう。かりょうびんがらちょう。
※往生要集(984‐985)大文二「孔雀鸚鵡・伽陵頻伽等。百宝色鳥、昼夜六時出和雅音
※仮名草子・尤双紙(1632)上「たかきもののしなじな〈略〉かれうびんがのこゑたてて、わらはべのうたひ」
② 美しい芸者、または花魁(おいらん)。また、美声芸妓にもいう。
※雑俳・柳多留‐三四(1806)「かりゃうびんがのなれなれしは踊子

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デジタル大辞泉 「迦陵頻伽」の意味・読み・例文・類語

かりょうびんが【×迦陵頻×伽】

《〈梵〉kalaviṅkaの音写妙声美音妙音鳥などと訳す》雪山せっせんあるいは極楽浄土にいるという想像上の鳥。聞いて飽きることない美声によって法を説くとされ、浄土曼荼羅まんだらには人頭・鳥身の姿で表される。

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改訂新版 世界大百科事典 「迦陵頻伽」の意味・わかりやすい解説

迦陵頻伽 (かりょうびんが)

美声をもって知られる神話的な鳥。サンスクリットkalaviṅkaの音訳。妙音鳥とも訳される。卵の中にいるうちから鳴きだすという。極楽浄土で法を説く鳥の一つにあげられる。インドの仏教彫刻に人頭鳥身の姿で表され,美術的表現から察すると,この鳥の観念ギリシア神話セイレンの影響をうけているように思われる。
執筆者:

形像は,上半身が翼をもつ菩薩形,下半身が鳥の姿をとる。花器を両手で胸前に捧げる例や楽器を奏する例が多い。浄土の光景を特色づけるものとして浄土図の中に表現され,また如来の教えをたたえ,如来を供養する存在として重視され,日本では経箱の装飾文様や,仏堂内部の荘厳として表されている。唐招提寺講堂の弥勒仏像の光背や,中尊寺の螺鈿(らでん)八角須弥壇格狭間(しゆみだんこうざま)や華鬘(けまん)は好例である。なお,涅槃図(ねはんず)にも動物に混じって添えられ,さらに仏を供養する法会に,胡蝶舞と対で舞われた迦陵頻舞があった。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「迦陵頻伽」の意味・わかりやすい解説

迦陵頻伽
かりょうびんが

仏典にみえる鳥の名。サンスクリット語のカラビンカKalavikaの音写。歌羅頻伽(からびんが)、羯羅頻伽、迦毘伽羅(かびから)、迦陵頻とも写し、鸞(らん)、哀鸞(あいらん)、妙声、美音、美音言、好声鳥、好音声鳥などと訳される。インドホトトギスのこととされ、スズメに類した鳥であるが、ことにその声の美しいことで有名。雪山(せっせん)に住む美声の鳥であるとも、極楽(ごくらく)の鳥であるともいう。浄土曼荼羅(じょうどまんだら)絵では人頭鳥身の姿に描かれる。なお迦陵頻の舞は、仏を供養する法会(ほうえ)に行われた古い舞楽の名である。

[伊藤瑞叡]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「迦陵頻伽」の意味・わかりやすい解説

迦陵頻伽
かりょうびんが

仏教で説かれる想像上の鳥で極楽浄土にすみ,妙声をもって法を説くといわれ,人頭鳥身の姿に表わされる。古く中国で図様化され,浄土変相図や天井画などの建築装飾,華鬘 (けまん) などの工芸文様中にその美しい姿がみられる。

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