速玉之男神(読み)はやたまのおのかみ

朝日日本歴史人物事典 「速玉之男神」の解説

速玉之男神

日本書紀』の神話に登場する唾の神。絶命して黄泉国へ去った伊奘冉(イザナミ)を連れ戻しにいった伊奘諾は,見ないでくれといわれたイザナミを見てしまい,喧嘩して妻と別れることになったが,その別れ際に唾を吐いた。その唾を吐く神をハヤタマノオと呼び,(両神の関係を)掃う神を泉津事解之男と呼ぶ,とある。この説明に通じる話には,失った釣り針を求めて海宮へいった山幸が,口に含んだ首飾りの玉とともに唾を容器の中に吐き入れると,玉は容器から離れなくなったと語る『古事記』の海幸,山幸の神話がある。これらは,唾を吐くことが契約を強固にするという発想を反映するものと考えられている。誓約の際に唾,爪などを相手に渡す習俗が海外にあることが知られているが,唾がわざわざハヤタマノオという名を与えられているのは,日本のこの習俗が強固だったことを示すものか。

(佐佐木隆)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「速玉之男神」の解説

速玉之男神 はやたまのおのかみ

「日本書紀」にみえる神。
伊奘諾尊(いざなぎのみこと)が黄泉国(よみのくに)の伊奘冉尊(いざなみのみこと)をおとずれたとき,みないでほしいといわれたその姿をみてしまい,離縁することになった。その約束をかためるためにはいた唾(つば)から生まれた神。唾を約束をかためる意につかうことは,海幸・山幸の神話にもみえる。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android