逼塞(読み)ひっそく

精選版 日本国語大辞典 「逼塞」の意味・読み・例文・類語

ひっ‐そく【逼塞】

〘名〙
① (━する) せまりふさがること。逼迫(ひっぱく)していること。
※正法眼蔵(1231‐53)仏性「七通を逼塞することなかれ」
② (━する) 姿を隠してこもること。身をつつしむこと。謹慎すること。また、零落して引きこもること。落ちぶれて世間から隠れ住むこと。
仮名草子智恵鑑(1660)一「御勘気をかうむり、ひっそくしおるものなどを」
③ (━する) 内心推量すること。
毛利家文書‐(弘治三年)(1557)一一月二五日・毛利元就書状「唯今如此候とても、ただただ内心には、此御ひっそくたるべく候」
江戸時代刑罰一つ武士僧侶などに科せられた自由刑で、門を閉じ昼間出入りは禁ぜられたが、夜間潜戸(くぐりど)から目立たないように出入りすることは許された。五〇日、三〇日の二種があり、閉門より軽く、遠慮より重い。〔禁令考‐後集・第四・巻三五・宝永元年(1704)一二月〕

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デジタル大辞泉 「逼塞」の意味・読み・例文・類語

ひっ‐そく【×逼塞】

[名](スル)《せまりふさがる意》
落ちぶれて世間から隠れ、ひっそり暮らすこと。「郷里逼塞する」
江戸時代の武士や僧侶に科された刑罰の一。門を閉ざして昼間の出入りを許さないもの。閉門よりも軽く、遠慮より重い。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「逼塞」の意味・わかりやすい解説

逼塞
ひっそく

江戸時代の刑罰の一つ。武士や僧尼に科せられ,『公事方御定書』には,「門を閉ざし,夜間くぐり戸より目立たないように出入りすることはさしつかえない」とある。また病気火事の場合は閉門のときと同様この限りではなかった。閉門より軽く,遠慮より重いとされている。なお明治政府も,仮刑律において公家,武士,僧尼の閏刑の一つとしてこれを採用している。続く『新律綱領』では不採用。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「逼塞」の解説

逼塞
ひっそく

江戸時代,武士および僧侶などに対して科せられた謹慎刑。自宅寺社の門を閉じて謹慎させた。昼間の出入りは禁止されていたが,夜間潜門から目につかぬように出入りすることは許されていた。罪の軽重により,30日・50日の別があった。閉門より軽く,遠慮より重いと位置づけられていた。

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