精選版 日本国語大辞典 「遠」の意味・読み・例文・類語
とお・い とほい【遠】
〘形口〙 とほ・し 〘形ク〙
[一] 空間・時間のへだたりが大きい。
① 空間・距離のへだたりが大きい。はるかに離れている。へだたっている。
※古事記(712)上「椽に結ひし髪を解かす間に、遠く逃げたまひき」
② 時間のへだたりが大きい。ほど久しい。
(イ) ある時点より過去に大きくさかのぼる。非常に古い。昔に属している。
(ロ) ある時点より将来にむかってへだたりが大きい。はるか先のことに属している。行く末ながい。
※万葉(8C後)九・一八〇九「遐(とほき)代に 語り継がむと 処女墓 中につくり置き」
(ハ) (「遠き別れ」などの形で) 永久のことに属している。それっきりである。
③ (「目が遠い」の形で対象物とのへだたりを普通以上に置いて見るところから) 老眼である。とおめである。
④ (同じ音を聞いても普通より大きなへだたりを感じるところから) 音が小さく聞こえる。耳がよく聞こえない。難聴である。
※日本読本(1887)〈新保磐次〉五「一時は熱の為めに耳さへ遠くなりき」
[二] 抽象的な事柄について、関係が密接でない。
① 心のつながりが緊密でない。親しくない。うとい。
※万葉(8C後)一一・二七〇一「明日香川明日も渡らむ石橋の遠(とほき)心は思ほえぬかも」
② 対象に心が向かない。気がすすまない。迂遠である。
※源氏(1001‐14頃)乙女「学問などに身を苦しめむことはいととをくなむおぼゆべかめる」
③ 関連や関係が浅い。つながりが薄い。縁遠い。
※源氏(1001‐14頃)橋姫「世の常の女しくなよびたるかたはとをくやとおしはからるる御有様なり」
※日本文化の雑種性(1955)〈加藤周一〉一「和風からは遠いものである」
とお‐げ
〘形動〙
とお‐さ
〘名〙
とお とほ【遠】
とお・し とほし【遠】
〘形ク〙 ⇒とおい(遠)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報