郭璞(読み)かくはく

精選版 日本国語大辞典 「郭璞」の意味・読み・例文・類語

かく‐はく クヮク‥【郭璞】

中国、西晉末から東晉にかけての学者詩人。字は景純。博学で、詩文に優れ、卜筮(ぼくぜい)の術に長じた。元帝に仕え、のち、王敦(おうとん)部下となり、その謀反を占って凶と断じたため、殺された。「爾雅」「楚辞」「山海経」などを注した。(二七六‐三二四

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デジタル大辞泉 「郭璞」の意味・読み・例文・類語

かく‐はく〔クワク‐〕【郭璞】

[276~324]中国、東晋の学者・文人河東・聞喜(山西省)の人。あざなは景純。経学・詩文・暦数に通じ、「爾雅じが」「方言」「山海経せんがいきょう」に注をつけた。「遊仙詩」14首は代表作

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「郭璞」の意味・わかりやすい解説

郭璞
かくはく
(276―324)

中国、東晋(とうしん)の文人。字(あざな)は景純。聞喜県(山西省)の人。博学で詩文の才に恵まれ、当時の有力者に重用され、東晋建国に寄与した王敦(おうとん)(266―324)の参軍書記となったが、王敦の謀反に反対して殺された。『晋書』(巻72)の本伝には、とくに彼の五行、天文、卜筮(ぼくぜい)に関する優れた能力についての記録がみえる。詩人としても一流で、その代表作『遊仙詩』(14首)は、道家の立場にたって神仙を求める思想詩としての深みがあって高く評価される。学者としては、『爾雅(じが)』『方言』『穆天子伝(ぼくてんしでん)』『山海経(せんがいきょう)』などに注を施し、現在なお益するところが多い。

竹田 晃 2016年1月19日]

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改訂新版 世界大百科事典 「郭璞」の意味・わかりやすい解説

郭璞 (かくはく)
Guō Pú
生没年:276-324

中国,六朝時代の学者。字は景純。本貫は河東聞喜(山西省聞喜県)。西晋末に江南に行き,五行や天文,とりわけ卜筮(ぼくぜい)の術によって名をはせ,東晋王朝成立のはじめにその将来の命数を予言したという。だが,王敦(おうとん)が謀反をおこすに当たって,凶と断じたため殺された。《山海経(せんがいきよう)》や《穆天子伝(ぼくてんしでん)》の注釈には怪異なものにたいする関心が,《爾雅(じが)》や《三蒼》の注釈には古文奇字にたいする関心がうかがわれる。また仙界へのあこがれをうたう〈遊仙詩〉は新風をひらいた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「郭璞」の意味・わかりやすい解説

郭璞
かくはく
Guo Pu

[生]咸寧2(276)
[没]太寧2(324)
中国,六朝時代の東晋の学者,文学者。聞喜 (山西省) の人。字,景純。博学で詩賦をよくし,特に天文,卜筮 (ぼくぜい) の術に長じていた。東晋の元帝に仕えて著作郎などをつとめ,たびたび大事を占った。のち王敦 (おうとん) の記室参軍となり,王敦が謀反を起そうとしたとき,それを占って凶と断じたために殺された。その反俗的な生活と,占卜者としての名声による逸話が『晋書』の伝に多くみえる。『爾雅』『方言』『山海経』『穆天子伝』の注釈をし,詩は『遊仙詩』が,賦は『江賦』が知られる。

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世界大百科事典(旧版)内の郭璞の言及

【爾雅】より

… 後代《広雅》をはじめ多くの雅の字を冠する同類の字書を生んだ。漢代すでにいくつかの注釈が作られたが,散逸して断片しかのこらず,完全なテキストは晋の郭璞(かくはく)の注したものだけである。宋の邢(けいへい)はこれに従って《爾雅義疏》11巻を作り,今日ではそれが《十三経注疏》の中に収められ〈経〉に準ずる扱いを受けている。…

【山海経】より

…元来は図が付いていたが,そのままの形では現在に伝わらない。晋の郭璞(かくはく)に注があり,清の郝懿行(かくいこう)《山海経箋疏》がより詳しい注と校定を加えている。【小南 一郎】。…

【東晋】より

…317年から420年,元帝司馬睿(しばえい)から恭帝司馬徳文まで11代。創業の初めにあたって王朝の命数を占った郭璞(かくはく)は,〈二百年を享(う)けん〉といったという。〈百二年〉をひっくりかえして〈二百年〉といったのであり,およそ102年で滅んだ。…

【穆天子伝】より

…中国,西周の穆王の事跡を日月を追って記録したもので,汲冢(きゆうちよう)書の一つ。晋の荀勗(じゆんきよく)らが整理を加え,郭璞(かくはく)が注を付けた。6巻。…

※「郭璞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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