釈名(読み)しゃくみょう(英語表記)Shì míng

精選版 日本国語大辞典 「釈名」の意味・読み・例文・類語

しゃく‐みょう ‥ミャウ【釈名】

[1] 〘名〙
経論を解釈する際、題目意義を解きあかすこと。また、解きあかしたもの。
※栄花(1028‐92頃)もとのしづく「経のうちの心ばへ、大意、釈(シャク)名入文判しゃくよりして」
※俳諧・本朝文選(1706)作者列伝「僧千那者江州堅田産也。居于本福寺。釈名妙式上人」
[2] 古代中国の語学書。八巻。後漢の劉熙著。「爾雅」にならって、文字の意味や事物の名に関し、同音の語によって語源を説いたもの。影響を受けたものに、貝原益軒の「日本釈名」などがある。

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デジタル大辞泉 「釈名」の意味・読み・例文・類語

しゃくみょう【釈名】[書名]

中国の辞書。8巻。後漢末の劉熙りゅうき著。事物の名を27種に分類し、語源を説明したもの。1巻本、4巻本がある。逸雅。

しゃく‐みょう〔‐ミヤウ〕【釈名】

仏教の経論を解釈するとき、題目の意義を説き明かすこと。

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改訂新版 世界大百科事典 「釈名」の意味・わかりやすい解説

釈名 (しゃくみょう)
Shì míng

中国,後漢末ごろに作られた字書北海(山東省濰坊市付近)の劉煕(りゆうき)の著。27編。いま普通のテキストはこれを8巻に分ける。《爾雅》形式の訓詁の書で,その構成も〈釈天〉〈釈地〉以下,解説を伴った分類語彙集の形を取る。特色はその解説にあり,たとえば〈月(げつ)は闕(けつ)なり,満つればすなわち闕(か)くるなり〉(〈釈天〉),〈河(か)は下(か)なり,地の下る処に随いて而して通流するなり〉(〈釈水〉)のごとく,同音もしくは類似音をもつ他の文字の意味によって,問題の語の解釈にしようとする。その当時の字音の体系や,当時の人のものの考え方をうかがう資料としても重要である。なお,こうした字音の類似に頼る訓詁法は音訓もしくは声訓と呼ばれる。《釈名》は音訓を利用した字書である。注釈として清の畢沅(ひつげん)の《釈名疏証》,王先謙の《釈名疏証補》等がよく利用される。明の郎奎金が編集した《五雅》という訓詁学叢書では《逸雅》と呼ばれている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「釈名」の意味・わかりやすい解説

釈名
しゃくみょう
Shi-ming

中国の字書。後漢末の劉煕 (りゅうき) の著。同音の言葉によって語源を説明したもの。その内容によって釈天,釈地,釈山に始り,釈疾病,釈喪制に終る 27編に分類する体裁は『爾雅 (じが) 』と同じであるが,音声の近い語は意味にも関連があるとする「声訓」の立場から解説を加えている点に特色がある。こじつけにすぎない説もあるのはやむをえないが,語源の解説として重要な資料であり,上古漢語の音韻や語彙,また今日では実体のわからない器物調度について貴重な記載が少くない。清の王先謙の『釈名疏証』がすぐれた研究書とされる。

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世界大百科事典(旧版)内の釈名の言及

【音義説】より

…これは同音ないしは近似音等を借りて語義を説くものである。漢代に多用され,劉熙《釈名(しやくみよう)》はその専著である。たとえば,〈天,顕也。…

【百科事典】より


[類書の起源]
 類書の起源を何に求めるかについては議論のあるところであるが,筆者の考えによればまず第1は字書である。最古の字書で十三経の一つに数えられる《爾雅(じが)》においてすでに,類関係によって文字を区分する方法がとられており,親・宮・器・楽・天・地など19類に分けられるのであるが,後漢の劉熙(りゆうき)が著した《釈名》になると釈天・釈地に始まる27類がみごとに体系化されてくる。そして,こうした分類とその体系は後の類書に大きな影響を与えた。…

※「釈名」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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