難陀(読み)なんだ

精選版 日本国語大辞典 「難陀」の意味・読み・例文・類語

なんだ【難陀】

(Nanda の音訳)
[一] 釈迦異母弟。有喜と意訳する。紀元前四~五世紀のインドの人。美貌の妻孫陀利(すんだり)への思いを出家後も捨てきれずたびたび諭され、のち悟りを得て長老となり、感覚器官などの制御に特に傑出したという。(二)と区別するため孫陀利難陀ともいう。〔増一阿含経‐三〕
[二] 釈迦の弟子の一人。牧牛者であったところから、(一)と区別して牧牛難陀ともいう。善歓喜。牧牛。
※観智院本三宝絵(984)下「難陀比丘は昔維衛仏の時に一たひ衆僧に湯あむししによりて今王のたねに生て」 〔法華文句‐二・上〕
[三] 六群比丘の一人。
[四] 唯識十大論師の一人。六世紀頃のインドの仏教学者。
※春日社三十講最初御願文(1288)「夫春日大明神者内証最高。本是安恵難陀之化身也」
[五] =なんだりゅうおう(難陀龍王)〔法華文句‐一・下〕

なんだ【難陀】

(Nandā の音訳)
[一] 波斯匿王(はしのくおう)が仏に万灯を供養したのに対して、わずかに一灯を捧げた貧女の名。
[二] 釈迦の異母妹。孫陀利難陀の妹で、尼となって禅定第一とうたわれた。

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デジタル大辞泉 「難陀」の意味・読み・例文・類語

なんだ【難陀】

《〈梵〉Nandaの音写
釈迦の異母弟。孫陀羅そんだら難陀。
釈迦の弟子の一。牧牛難陀。
唯識十大論師の一。6世紀ごろのインドの仏教学者。
難陀竜王」に同じ。
《〈梵〉Nandāの音写》波斯匿王はしのくおうが仏に万灯を供養したのに対して、わずかに一灯を供養した貧女の名。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「難陀」の意味・わかりやすい解説

難陀
なんだ

生没年不詳。仏陀(釈迦(しゃか))の弟子。サンスクリット名ナンダNandaの音写。祖仏陀の異母弟で、容姿端正であったといわれる。仏陀の生まれ故郷カピラバストゥで、美女スンダリーと新婚生活を送っていたところ、出家を勧められて修行に努めるが、妻との愛欲のきずなを断ちがたく、ために仏陀が種々の方便を用いて教化に努め、ついに彼にいっさいの煩悩(ぼんのう)を断じた阿羅漢果(あらかんか)の階位を得させたという。のちに3世紀のアシュバゴーシャ馬鳴(めみょう))が、その間のエピソードを交えた物語を、珠玉詩編『サウンダラナンダ』(端正なる難陀)に美しく伝えている。

[佐藤良純 2016年12月12日]

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