風炉(読み)ふろ

精選版 日本国語大辞典 「風炉」の意味・読み・例文・類語

ふ‐ろ【風炉】

〘名〙
① 床を方形に切った炉ではなく、銅や鉄などでつくった、火を入れて暖をとる炉。火鉢の類。
延喜式(927)一七「白銅風炉一具料」
② 湯を沸かしたり、物を煮炊きしたりする炉。
私聚百因縁集(1257)九「室に釜櫓(フロ)を置かず、政所より飯を、炊ぎ車に積て」
茶の湯で、席上に置き、火を入れて釜をかけ湯を沸かすもの。金属製または土製で、まれに木製もある。夏秋期に炉のかわりに用いる。
※玉塵抄(1563)一九「小い風呂をして茶の湯をわかいて」 〔茶経

ふう‐ろ【風炉】

〘名〙
① 小さい溶解坩堝(るつぼ)試金用の炉。円形の底部火格子があり、その上へ数個の坩堝を置き、その周囲コークスを入れて点火して、摂氏一四〇〇度の温度で熱する装置。〔稿本化学語彙(1900)〕
② =ふろ(風炉)日葡辞書(1603‐04)〕

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デジタル大辞泉 「風炉」の意味・読み・例文・類語

ふう‐ろ【風炉】

小さい試金用坩堝るつぼを加熱するための炉。
ふろ(風炉)

ふ‐ろ【風炉】

茶の湯の席上で、かまをかけて湯をわかす炉。唐銅からかね製・鉄製・土製・木製などがあり、夏を中心に用いる。ふうろ。

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改訂新版 世界大百科事典 「風炉」の意味・わかりやすい解説

風炉 (ふろ)

茶の湯で釜の湯を沸かすための火鉢状の道具をいう。風炉の歴史は古く,8世紀に中国の陸羽が書いた《茶経》に〈風炉〉として記載され,銅や鉄を鋳物にしてつくり,鼎(かなえ)に類似した形状で,中には泥を墁(ぬ)るとしてあり,3足で3ヵ所に風通しのための窓があけてあった。中国では宋代になると,唐代の団茶から抹茶に変様したが,この抹茶を喫するのに用いたとされる。1259年宋に渡った臨済宗の僧,南浦紹明(なんぽじようみよう)(1235-1308)によって,台子(だいす)とそこに飾る風炉,釜,杓立,建水,蓋置,水指の唐銅(からかね)皆具が日本に伝来したというのが,茶の湯の理解である。この唐銅風炉は,武野紹鷗によって土(ど)風炉(素焼の上に黒漆を塗る)が創作されることで和様化した。この形を紹鷗風炉,眉風炉といい,現在では唐銅風炉より上位とされる。この土風炉はやがて奈良風炉と呼ばれる一般的な量産の風炉として広く発達し,さらに利休による利休面取風炉,その子息道安の形である道安風炉が定着した。現在は唐銅製,土製のほか木製,陶磁製の風炉も用いられる。茶の湯では,湯を沸かすのに夏季(5~10月)には風炉が用いられ,風炉中には風炉灰が入れられる。この灰には,〈二文字〉〈遠山〉〈搔上げ〉などの灰型があって,この〈灰をつくる〉ことが茶人の修練の一つになっている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「風炉」の意味・わかりやすい解説

風炉
ふろ

茶席で釜(かま)をかけ置き、湯を沸かすための夏季用の炉。鉄、唐銅(からかね)、土、木、陶磁製などの材質がある。古態は中国の鼎(かなえ)形であるが、わが国に伝えられてからは、台子皆具(だいすかいぐ)の一つとして切掛風炉(きりかけふろ)(釜の羽が口いっぱいにかかるようにつくられた風炉)が用いられるようになった。続いて茶道の進展とともに釜の形も多様になり、さらに五徳が創案されることによって、武野紹鴎(たけのじょうおう)のころに奈良で土風炉(どふろ)がつくられるようになり、五徳を据えて釜をかけるような口が基本となった。切掛風炉の代表は朝鮮風炉と琉球(りゅうきゅう)風炉で、ともに唐銅か鉄製、前後に窓がつくのを特色とする。土風炉は形によって透木(すきぎ)風炉、紹鴎風炉、尻張(しりばり)風炉、四方(よほう)風炉、道安(どうあん)風炉、紅鉢(べにばち)風炉の種類がある。なお、真を土風炉、行を唐銅風炉、草を鉄風炉・板風炉としている。

[筒井紘一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「風炉」の意味・わかりやすい解説

風炉
ふろ

茶道具の1つ。火を入れて釜をかけるもの。主として夏秋の季節に用い,冬春の季節はを用いる。古くは台子皆具の1つで,唐銅の切掛 (きりかけ) であったがのちには鉄製もでき,さらに紹鴎好みとして土風炉が作られ,また千利休が小田原陣中に工夫したという板風炉もある。現在は真,行,草に区別し,土風炉を真,唐銅鬼面と切掛風炉を行,鉄風炉,陶磁製の風炉,板風炉を草とする。形からは一文字,面取,尻張,丸炉,鬼面その他の名がある。

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百科事典マイペディア 「風炉」の意味・わかりやすい解説

風炉【ふろ】

茶道具の一つ。湯を沸かすのに用いる炉。土製,木製,鉄製の円形で,風を入れるように縁の一方をあけている。
→関連項目永楽保全台子

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普及版 字通 「風炉」の読み・字形・画数・意味

【風炉】ふうろ

茶の湯の炉釜。〔茶経、四之器〕風爐、銅鐵を以て之れを鑄(い)る。古鼎の形の如し。

字通「風」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の風炉の言及

【火鉢造】より

…火鉢や風炉を造る工人としては,奈良の西京火鉢造座が著名である。史料上では1333年(元弘3)の《内蔵寮領等目録》に〈大和国内侍原内小南供御人〉が火鉢土器を作料田の年貢として進上しているのと,京都商人役として,奈良火鉢10個を進上しているのをみる。…

※「風炉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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