ITS(読み)アイティーエス

デジタル大辞泉 「ITS」の意味・読み・例文・類語

アイ‐ティー‐エス【ITS】[Intelligent Transport Systems]

Intelligent Transport Systems最先端情報通信技術を用い、渋滞や交通事故といった道路交通問題の解決を目指す次世代の交通システム。日本や欧米で国家的プロジェクトとして推進されており、ナビゲーションの高機能化(VICS)、自動料金収受システムETC)など九つの分野で、開発、実用化が進められている。高度道路交通システム

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改訂新版 世界大百科事典 「ITS」の意味・わかりやすい解説

ITS (アイティーエス)

国際業種別書記局International Trade Secretariatsの略称。〈国際産業別組織〉とも訳す。諸国の労働組合が同一の職業または産業を基礎に国際的に連合したもの(産業別インター)をいう。今日では,そのうち国際自由労連系のものだけをさし,現在13のITSがある。〈書記局〉なる語は,19世紀の終りころヨーロッパで職業別または産業別の組合が国境をこえて連絡協力した際,ある国の関係組合を指定して書記局を担当させたことに由来する。その後,単産が産業別インター,たとえば鉱夫インター(MIF,1890),繊維インター(今日のITGLWF,1893),国際運輸労連(ITF,1896)を設立してからもITSの名称が引き続き使われて今日に至っている。第1次大戦直前にすでに28のITSがあり,大戦後アムステルダム・インターナショナル(国際労連,IFTU)と緊密な同盟関係を結んだ。

 ITSは,その初期の段階では関係組合の本部(書記局)間の協力,それもヨーロッパが主であったが,第2次大戦後は本格的な国際的連合体として全世界的存在にまでなってきた。1945年の世界労連WFTU)の結成にあたって,ITSは一致してその傘下に入ることを拒否した。歴史と伝統のあるITSとしては,従属的地位と中央集権的指導に服するわけにはいかなかったのである。戦後のILO(国際労働機関)が国際労働総会のほかに炭鉱,繊維,運輸など主要産業について3者(政府,使用者,労働者)構成の常設委員会の設置を決めていたことも,ITSの立場を強くした。49年の国際自由労連ICFTU)の結成によってITSは自らの自主性を前提にして協力関係に立ち,両者が〈同一の国際労働組合運動の陣営に属する〉ことを承認しあった。名門の国際運輸労連がJ.オルデンブロック書記長を国際自由労連の初代書記長に出し,すべての管理運営機関にITS代表が参加することが国際自由労連規約に明記された。これは,国際自由労連の一般方針をITS側も採用することを意味する。ITS側もいまでは自ら総会を定期的にもち,また国際自由労連側も個々のITS間の縄張争いの解決や組合統合に手を貸してきた。こうして現在では合計13にのぼるITSが国際労働組合運動の一翼を担っている。経済の国際化または世界化の進展,ことにEC(ヨーロッパ共同体)や多国籍企業の出現はITSにとって絶好の舞台になった。国際金属労連IMF),国際化学エネルギー鉱山一般労連(ICEM),国際食品産業関連労連(IUF)は,国際的巨大企業に対し加盟組合と共同して立ち向かうために個々の作業部会(企業別世界協議会)を設ける方式を開発し,国際的交渉権への道を歩みだした。日本との関係では,第2次大戦前は日本海員組合(全日本海員組合の前身)の国際運輸労連(ITF)加盟が唯一の例であったが,戦後は大多数のITSが日本の加盟団体をもつに至った。64年のIMF-JC(国際金属労連日本協議会,1975年に全日本金属産業労働組合協議会に改称)の結成は,その後の春闘における民間先行型を定着させ,また大産業別団体(大単産)が日本で出現する契機になった。
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知恵蔵 「ITS」の解説

ITS

高度道路交通システム。人と道路と車両に関する情報を最新の情報通信技術で結びつけることによって、交通事故や渋滞の解消、省エネや環境との共存など、様々な課題の解決を目的とする新しい交通システム。日本におけるITSは主に道路交通を対象とするが、道路交通の他に鉄道、海運、航空の交通も対象となりうる。
現在展開されている身近なITSには、「カーナビゲーションシステム」や、「道路交通情報提供サービス(VICS)」、高速道路の「自動料金支払システム(ETC)」、そして、バスの現在地やバス停での待ち時間が分かる「バスロケーションシステム」などがある。
ITS団体は、欧州、米国、アジア・太平洋の3地域にあり、毎年これら3団体が連携して、ITS世界会議を開催している。世界会議は1994年(パリで開催)より始まり、95年に横浜で第2回の世界会議が実施され、この時に「ITS」という言葉が世界共通の用語として定着した。その後、日本国内では、96年7月に「ITS推進に関する全体構想」が関係5省庁によって策定され、ファーストステージとして、前述のカーナビ、VICS、ETCなどの研究開発が推進された。これらの研究開発は、カーナビ市場の成長とともに日本のITSの成功事例として世界に知られている。
また、2004年に名古屋で開催された第11回世界会議の後、国内では、ITS推進のセカンドステージとして、「ITS推進の指針」が取りまとめられ、「世界一安全な道路交通社会」を目指すプロジェクトが官民連携のもとに進められることとなった。この指針は、ドライバーの安全運転を支援するシステムを搭載した自動車「先進安全自動車(ASV)」の開発と実用化に代表される「安全・安心」、CO2削減、物流の効率化などを考える「環境・効率」、そして、ユビキタスネットワーク環境を構築する「快適・利便」の三つを基本概念とするものである。
13年に東京で開催された第20回世界会議では、警察庁が中心となって進めている「安全運転支援システム(DSSS driving safety support systems)」や、国土交通省等による、広範囲の渋滞データや落下物や雪の情報などが受信できる「ITSスポットサービス」のデモンストレーションなどが行われ、世界65か国、2万人以上が参加した。

(横田一輝  ICTディレクター / 2014年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ASCII.jpデジタル用語辞典 「ITS」の解説

ITS

高度道路交通システム。情報処理技術を用いて、交通事故や渋滞といった道路交通問題の解決を目指す。ETCや安全運転の支援などの9つの開発分野から構成される。

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世界大百科事典(旧版)内のITSの言及

【国際自由労連】より

…いわゆる第一インターナショナル)に始まるが,これは,71年のパリ・コミューンを高く評価するマルクスら(つまり革命と政治重視派)と外国からのストやぶり阻止やスト支援の国際基金などを重視する組合運動家たちとの対立もあって,短命に終わった。後者の流れを継承するものとして,いろいろの業種にITS(業種別書記局)がいくつも生まれ,また諸国のナショナル・センター(中央団体)を集めた1901‐03年の国際労働組合書記局(本部コペンハーゲン,のちベルリン)からは,実質的に13年(正式には1919年)に国際労働組合連盟(IFTU。いわゆるアムステルダム・インターナショナル)が生まれた。…

【CAI】より

…PLATO III,IVやLOGO等に代表されるような多くのシステムが開発された。 一方で,カーボネルJ.CarbonellによってSCHOLARが1970年に発表され,それ以降,人工知能研究の発展を背景に知的CAI(ITS(Intelligent Tutoring System)とも呼ばれる)の研究が盛んになってきた。1970年代から80年代にかけて,MYCINの流れを汲むGUIDENや,減算教育のBUGGY,プログラミング教育のLISP TUTOR等が開発された。…

【労働組合】より

…と同時に国際化の進展にともない,労働組合運動の国際的連帯の必要性が痛感されてきた。(2)官公労働組合においても,スト権奪還闘争の重要な一環であったいわゆるILO闘争を通じて,国際自由労連およびITS(国際産業別組織)の援助を受け,それとの接触が深まる一方,ハンガリー事件,チェコ事件,ポーランドのたび重なる騒動などによって,社会主義圏の労働組合を中心とする世界労連の威信が国際的に低下した。(3)春闘が始まった当初には全労会議は闘争激発主義,スケジュール闘争だとしてこれに批判的であり,春闘は総評,中立労連がつくった春闘共闘会議主導で行われてきたが,65年ころになると同盟傘下の組合のなかに春に賃上げ闘争を行う組合が増加した。…

※「ITS」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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