O157(読み)おーいちごなな

日本大百科全書(ニッポニカ) 「O157」の意味・わかりやすい解説

O157
おーいちごなな

赤痢菌に似た強い毒素(ベロ毒素シガトキシン)をだす「腸管出血性大腸菌」の一種。腸管出血性大腸菌感染すると、はげしい腹痛、下痢、血便をおこし、抵抗力の少ない高齢者や小児など1割ほどの患者は重い腎臓・脳障害を伴う「溶血性尿毒症症候群」になり、ときに死亡する。1996年(平成8)春、O157により岡山県の小学校給食で死者2人がでるなどの後、同年7月、大阪府堺市の学校給食で患者9523人(1997年8月に確定、うち死者3人)という世界最大規模の食中毒がおき、その名が全国に広がった。厚生省(現厚生労働省)は同年8月、腸管出血性大腸菌感染症指定伝染病に格上げした。その後、1999年に施行された感染症予防・医療法(感染症法)で3類感染症に分類された。1982年、アメリカでハンバーガーの食中毒から菌がみつかったのが最初で、以後、世界各地でみつかっている。日本では1990年、埼玉県浦和市(現さいたま市)の幼稚園井戸水から約300人が感染、2人が亡くなったが、軽視されていた。O157はもともとウシなどの腸におり、解体処理時に肉、さらに接触した食品から広がるが、潜伏期間数日と長く、原因食品の特定はむずかしい。O157は高温には弱く、75℃で1分以上の加熱で死滅するので、肉などもよく火を通せば心配はない。他の食中毒防止策同様、手洗いや衛生的な食品の取り扱いが重要である。

田辺 功]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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