デジタル大辞泉
「おます」の意味・読み・例文・類語
おま・す
《「おまらす」の音変化》
[動サ四]
1 与える、の意の謙譲語。差し上げる。
「二人の衆にも酒―・せ」〈浄・博多小女郎〉
2 (補助動詞)…してあげる、の意の謙譲語。
「御機嫌を直す囃子物を教へて―・さうかといふ事ぢゃ」〈虎寛狂・末広がり〉
[動サ下二]
1 1に同じ。
「何ぞ―・せたいものぢゃが」〈虎寛狂・入間川〉
2 (補助動詞)2に同じ。
「今生未来の晴れの月額、母が剃って―・せうぞ」〈浄・兜軍記〉
おま・す
[動サ特活]
1 「ある」「居る」の丁寧語。あります。ございます。
「お母はんの旦那が―・す」〈宇野浩二・苦の世界〉
「このふけのとれることが―・すがな」〈滑・膝栗毛・五〉
2 (補助動詞)…である、の意の丁寧語。
「ややこし―・すな」〈上司・鱧の皮〉
「あなたのそのなりは、何で―・すぞいな」〈滑・膝栗毛・八〉
[補説]近世大坂新町の遊女ことばに始まるが、文政(1818~1830)ごろには一般女性語となり、のちには男性も用いた。現在は京阪地方などで用いられる。なお、打消し形「おません」は、文政以降「おまへん」の形をとるようになった。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
おま・す
(「おまらす」の変化した語)
[1] 〘他サ下二〙
[一] 人に物を与える意の謙譲語。与える
先方を敬っていう。さしあげる。
※虎寛本狂言・入間川(室町末‐近世初)「何ぞおませたいものじゃが」
[二] (動詞の連用形に
助詞「て(で)」の付いた形に付いて) 補助動詞として用いる。自分から他人に「してあげる」意を表わす謙譲語。(て)さしあげる。
※雲形本狂言・
胸突(室町末‐近世初)「夫ならば皆ゆるしておませうぞ」
[2] 〘他サ四〙
[一] (一)(一)に同じ。
※
狂言記・
伯母が酒(1660)「此あたりにめでたいおしゅくらうがあったによって、はつ酒をおましたわいの」
[二] (一)(二)に同じ。
※虎寛本狂言・末広がり(室町末‐近世初)「御機嫌を直す囃子物を教へておまさうかと言事じゃ」
[語誌](1)もとサ行下二段に活用したが、江戸中期以降に四段活用例も現われる。しかしその後は衰微していく。→「
おまらす」の語誌。
(2)「
貞丈雑記‐一五」には「人に物を進ずる事をおませると云は御参らせると云略語なり」とあって下一段化したとみられる「おませる」を用いている。
おま・す
〘自サ特活〙
[一] 「ある」「いる」の意に当たる丁寧語。あります。ございます。〔
洒落本・虚実柳巷方言(1794)〕
※滑稽本・
東海道中膝栗毛(1802‐09)八「ハテ、御ゑんりょはおませんわいな」
[二] 補助動詞として用いる。「である」の意に当たる丁寧語。(で)ございます。
※洒落本・南遊記(1800)三「どうやら仏のない堂へ参たやうにおました」
[語誌](1)
語源ははっきりしないが、「御座ります」が「おざります」となり、これから変化したものか。寛政ごろ大坂新町の
遊郭で通行していた遊女語であったが〔洒落本・虚実柳巷方言〕、文政ごろ(
一八一八‐三〇)から一般町人の言葉デヤスを凌駕して用いられるようになるが、丁寧語としての
オマスの
品位は低かった。
(2)元来、四段に活用したが、現在はオマシ、オマスの形だけで、オマヘン、オマシタ、オマス、オマッサカイニ、オマスヤロのように使われ、さらにオマと縮められることがある。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報