扁桃周囲炎/扁桃周囲膿瘍(読み)へんとうしゅういえんへんとうしゅういのうよう(英語表記)Peritonsillitis / Peritonsillar Abscess

家庭医学館 の解説

へんとうしゅういえんへんとうしゅういのうよう【扁桃周囲炎/扁桃周囲膿瘍 Peritonsillitis / Peritonsillar Abscess】

[どんな病気か]
 急性扁桃炎(「急性扁桃炎(アンギーナ/口峡炎)」)の炎症がひどくなり、深い部位にまで広がって、口蓋扁桃(こうがいへんとう)をおおう被膜(ひまく)と咽頭収縮筋(いんとうしゅうしゅくきん)の間にあるすき間に炎症がみられるものを扁桃周囲炎、ここに膿(うみ)がたまった状態を扁桃周囲膿瘍といいます。
 このような炎症の広がりは、子どもにはあまりみられないようです。その理由として、①子どもの口蓋扁桃の被膜は緻密(ちみつ)で厚い、②子どもの口蓋扁桃は、扁桃上窩(へんとうじょうか)や陰窩(いんか)の幅が広く、閉塞(へいそく)や炎症がくり返されることによる瘢痕はんこん)(ひきつれ)を形成することが少ないことがあげられます。そのため、炎症が被膜を越えて広がることが少ないとされています。
[症状]
 急性扁桃炎の症状に続いて高熱が出ます。のどの痛みがかなり強く、口を大きくあけることができず、つばを飲み込むのにも苦労するため、よだれをたらすようになります。飲食物も飲み込みにくくなります。
[検査と診断]
 通常、左右のどちらか片側の口蓋扁桃のまわりが強く腫(は)れ、暗赤色になり、むくんだように見えます。
 両方の扁桃に炎症がおこることは少ないようです。これは左右の構造のわずかなちがいや、急性扁桃炎をおこしているときになんらかの治療がなされることがあるためとされています。
[治療]
 高い熱と激しい痛みがあり、飲食物が十分に摂取できず、脱水など全身状態が悪いときは、入院して水分や栄養の補充のための点滴と、抗生物質の静脈内投与が必要です。
 膿瘍を形成している扁桃周囲膿瘍の場合は、注射針を用いて膿を排出(穿刺排膿せんしはいのう))させたり、ひどく腫れている部位を切開して膿を排出(切開排膿)することが必要となります。
 この病気がくり返しおこる場合は、口蓋扁桃摘出術(こうがいへんとうてきしゅつじゅつ)を行なうようにします。

へんとうしゅういえんへんとうしゅういのうよう【扁桃周囲炎/扁桃周囲膿瘍 Peritonsillitis / Peritonsillar Abscess】

[どんな病気か]
 急性扁桃炎(きゅうせいへんとうえん)(「急性扁桃炎」)の炎症が周囲組織に波及した状態が扁桃周囲炎で、そこに膿(うみ)がたまった状態が扁桃周囲膿瘍です。
 急性扁桃炎よりも症状が激しく、とくに飲食物を飲み込むときののどの痛みが強く、口を大きくあけられなくなります。声は含み声となり、くびを曲げようとすると激しく痛みます。
 口を大きくあけられないので見えにくいのですが、片側の扁桃の周囲がひどく腫(は)れて暗赤色となり、扁桃の表面に白い膜(まく)がついているのがわかります。
 起炎菌(きえんきん)を探るために病巣から細菌を検出する検査や、病状の程度を把握するため血液検査が行なわれます。
[治療]
 軽度の場合は、抗生物質と消炎鎮痛薬を服用します。
 摂食困難で脱水状態になっている場合は、入院して点滴による水分・栄養の補給と抗生物質の使用が必要です。
 膿瘍ができた場合は穿刺(せんし)か切開を行ない、排膿(はいのう)します。膿瘍が拡大すると、頸部(けいぶ)の深い部位に膿瘍がたまり(副咽頭間隙膿瘍(ふくいんとうかんげきのうよう)、深頸部膿瘍(しんけいぶのうよう))、呼吸困難におちいり、早急な手術が必要となることもあります。糖尿病の人や高齢者は、これらの進行が早く、急を要します。
 扁桃周囲炎をくり返す場合には、扁桃摘出術が適応となります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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