α線(読み)アルファセン

デジタル大辞泉 「α線」の意味・読み・例文・類語

アルファ‐せん【α線/アルファ線】

放射線の一。放射性元素α崩壊で放出されるα粒子の流れ。人工的には、サイクロトロンなどを用いてヘリウムイオンを加速して発生させる。βベータ線・γガンマ線より電離作用が強く、透過力は小さい。数センチメートルの空気の層や紙一枚で容易に遮蔽することができるが、α線を放出する放射性物質を体内に取り込んだ場合、内部被曝により人体に悪影響をもたらす。
[類語]放射線放射能宇宙線赤外線熱線遠赤外線紫外線可視光線ベータ線ガンマ線エックス線レントゲン線

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「α線」の意味・わかりやすい解説

α線【アルファせん】

放射性原子核のα崩壊の際放出されるα粒子の流れ。α粒子はヘリウム44He)の原子核で,陽子2個と中性子2個からなり,正電気2単位と質量数4をもつ。電離作用が強いが透過距離が短く,飛跡は太く短い。外部からのα線は皮膚でさえぎられるので危険はないが,α線源が体内にはいるときわめて危険。化学作用,写真作用があり,蛍光板にあたると閃光(せんこう)(シンチレーション)を生じる。原子核反応を起こすのに利用される。→α崩壊放射線
→関連項目宇宙線ガイガー=ミュラー計数管核反応原子核模型β線夜光塗料

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「α線」の意味・わかりやすい解説

α線
あるふぁせん

放射線の一種で、高い運動エネルギーをもつヘリウム4の原子核の流れ。不安定原子核のα崩壊に伴い放出されるα粒子で、陽子2個と中性子2個で構成される。陽子2個によりプラス帯電しており、電離作用が強い。透過力は弱く、薄い紙でも遮ることができ、皮膚にα線が当たっても、内部にはほとんど影響しない。しかし、α線を放射する放射性物質を体内に取り込むと、周囲の細胞を傷つけるおそれ(内部被曝(ひばく))がある。ラザフォードのα粒子の散乱実験に使われた。

[山本将史 2021年7月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「α線」の解説

α線
アルファセン
α-rays

放射性核種のα崩壊によって放出される4Heの原子核粒子線.α線を放出した核種は原子番号を2,質量数を4減らした核種に変化する.初期の研究において,天然の放射性物質からの放射線には3種類あることが確認され,α線,β線,γ線と命名された.命名者はE. Rutherford(ラザフォード)である.自然界で観測されるα線のエネルギーは数 MeV で,最大でも9 MeV,大気中の飛程は約10 cm である.α線のスペクトルはβ線とは異なり,線スペクトルである.α線が物質を通過する際には多くのイオンおよび励起した原子や分子を発生させるが,飛跡は直線的で,薄膜ならば大半が通過してしまう.しかし,一部は原子核によって散乱されて(ラザフォード散乱)進路を大きく変更する.このことに最初に気付いたRutherfordが,1911年に原子の惑星模型を発表した.α線は,脳腫瘍悪性黒色腫などのがん治療,薄膜の厚さ測定,さらには夜光塗料など,さまざまな分野で利用されている.α崩壊ではなく,サイクロトロンなどの加速器によって加速されたヘリウム核や,6Li(n,α)Tなどの核反応で生成するヘリウム核はα線とはよばず,α粒子という.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「α線」の意味・わかりやすい解説

α線 (アルファせん)
α-rays

原子核がα崩壊をするときに放出される放射線。ヘリウム4(4He)の原子核(α粒子α-particle。陽子2個と中性子2個が結合したもの)の粒子線である。そのエネルギーはほぼ一様に数MeVの単色スペクトルを示すが,いくつかの微細構造をもっていることもある。物質中では電離作用が大きいため,β線,γ線より透過力は小さい。エネルギーと物質によって決まる一定の透過距離(飛程)がある。
放射線
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「α線」の意味・わかりやすい解説

α線
アルファせん
α-ray

放射性核種が自然崩壊するとき放出される放射線の1種で,運動エネルギーが数百万 eV のヘリウム4の原子核の集りである。普通の放射性核種から放出される放射線にはほかにβ線γ線とがあるが,α線はそれらのなかで最も電離作用が強く,物質を通過するとき,その道筋に沿って多数のイオンを生じさせる。写真乾板を感光させ,原子核乾板中に飛跡をつくり,硫化亜鉛のようなケイ光物質に当ってケイ光を発する。透過力は弱く,1気圧の空気中では数 cm であり,また 0.1 mm のプラスチックや紙片によって止ってしまう。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のα線の言及

【原子力】より

…キュリー夫妻(M.キュリーP.キュリー)はこのベクレルの実験結果を徹底的に調べ,ウランが出している放射線はウランに固有のものであり,また,ウラン以外にも同じように放射線を出す元素があることを発見(1898),放射線を出す性質や能力を放射能とよび,放射能をもつ元素を放射性元素とよんだ。次いでE.ラザフォードは,ウランから放出される放射線のなかに,正の電荷と負の電荷をもつ放射線があることに気がつき,それぞれ,α線とβ線と名づけた。さらに,電荷をまったくもたない放射線もあることが発見され,γ線と命名された。…

【放射線】より

…放射性同位体が放射性崩壊するときに放出される粒子線,あるいは電磁波のことで,α線,β線,γ線をさして用いられるが,X線や,加速器ビームの照射によって生成する中性子線などの二次粒子線,宇宙線など,同じ程度あるいはそれ以上のエネルギーをもつ粒子線,電磁波を含めていうこともある。程度に差はあるが,一般に,物質中で透過力をもつことが特徴である。…

※「α線」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android