《京屋襟店》(読み)きょうやえりてん

世界大百科事典(旧版)内の《京屋襟店》の言及

【田中栄三】より

…次いで,芸術座が舞台にのせて大成功したトルストイの《生ける屍》(1918)を映画化し,まだ〈活動写真〉の域を脱しきれないものではあったが,演出や演技指導には古い新派の型を破ろうとする新鮮な意欲が見られ,カット・バック,移動撮影,逆光線撮影などが効果的に使用されて注目を浴びた。当時の日本映画の革新運動の大部分は,その内実としてはアメリカ映画の模倣やヨーロッパ近代劇の翻案であったが,田中はオリジナルシナリオによる《京屋襟店(えりてん)》(1922)と《髑髏(どくろ)の舞》(1923)で,日本人の生活を日本人の視点から写実的に描き,とくに下町の老舗が没落するものがたりを四季の移り変りのなかで描いた《京屋襟店》は,〈傑作〉と呼ばれた最初の日本映画であり,田中はそれにより映画革新運動の理論家というよりはむしろ実践家としての業績を残した。トーキー以後はほとんど作品がなく,現場から退いた後は,日本映画俳優学校で多くの人材を育てた。…

【日本映画】より

…たとえば,1920年に日活が女優採用に踏みきったことである。また,先に新派《生ける屍》で新鮮な映画手法を見せた田中栄三が,22年,東京下町の老舗の没落を描いた《京屋襟店(えりみせ)》によって,日本人の生活と欲望をなまなましく表現した画期的な映画作品を出現させ,その姿勢を翌年の《髑髏(どくろ)の舞》でも貫いた。前者はまだ女形を使っているが,日本でほとんど最後の女形映画といわれ,後者にはやがてスター女優となる岡田嘉子,夏川静江(のち静枝)が出演している。…

※「《京屋襟店》」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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