《春告鳥》(読み)はるつげどり

世界大百科事典(旧版)内の《春告鳥》の言及

【為永春水】より

…この作品は若い婦女子の読者から熱狂的歓迎を受け,春水は一躍文壇の第一線に登場し,自ら〈江戸人情本の元祖〉を名のった。読者の好評もあって,書肆の依頼で次々にこの作品の続編を執筆することになり,ほかにも《春告鳥(はるつげどり)》(全4編,1836‐37)以下の多数の作品を発表する。当然全作品を独力で完成することは難しく,36年以後の作品の大部分は,〈為永連〉と称する春水と新しい門人たちの制作であった。…

【人情本】より

…しかし,2世楚満人の戯号を改めた為永春水が,1832年(天保3)《春色梅児誉美(しゆんしよくうめごよみ)》を発表するに及んで,その凄艶な恋愛描写と洗練された〈いき〉の美学が少なからぬ反響を呼び,風俗小説としての人情本のジャンルが確立することになった。みずから〈東都人情本の元祖〉と名のった春水は,《春色梅児誉美》にひきつづいて,深川芸者の意気地と張りを描いた《春色辰巳園(たつみのその)》(1833‐35),富裕な商家の若旦那と小間使の恋をつづった《春告鳥(はるつげどり)》(1836)などの佳作を発表するが,殺到する注文に応ずるために門弟を動員した合作体制をとった37年以降の作品には見るべきものが乏しい。人情本作者としては春水のほかに,《閑情末摘花(かんじようすえつむはな)》(1839‐41)の松亭金水,《仮名文章娘節用(かなまじりむすめせつよう)》(1831‐34)の曲山人らがあげられるが,天保の改革の際に風俗を乱すものとして春水が処罰されてからは,ジャンルとしての生命を失っていく。…

※「《春告鳥》」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android