《都会交響楽》(読み)とかいこうきょうがく

世界大百科事典(旧版)内の《都会交響楽》の言及

【プロレタリア映画】より

…左翼思想といっても時流に乗った形式的なものであったと内田吐夢はのちに回顧しているが,地方から東京へ出てきて打算的な立身出世主義を処世哲学とする野心的な1人の青年が,生きている人形のように翻弄(ほんろう)される無残な姿を描いて,資本主義社会の巨大なからくりと冷酷さをあばいた映画であった。つづいて,《幕末五剣録》を構想していた伊藤大輔が,幕末という思想的激動期を迎えて苦悩する良心的知識人ともいうべき幕臣の悲劇を描いた《一殺多生剣》(1929),圧制に苦しむ農民の封建的支配制度に対する反抗を,領主の御家騒動をからませながら〈抵抗のドラマ〉として描いた《斬人斬馬剣(ざんじんざんばけん)》(1929)をつくり,失業武士の生活苦と反抗意識を描いた辻吉朗(1892‐1945)監督の《傘張剣法》(1929),林房雄,片岡鉄兵といったプロレタリア作家が脚本に参加して〈怠惰なる有閑階級〉と〈誠実なる労働者階級〉との対比を描いた溝口健二監督《都会交響楽》(1929)などがつくられた。1928年末に結成された〈プロキノ(日本プロレタリア映画同盟)〉が活動を開始するのも,上記の作品群がつくられたのと同じ29年であった。…

※「《都会交響楽》」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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