「トム・クルーズ法案」(読み)とむくるーずほうあん(英語表記)“Tom Cruise Law"

知恵蔵 「「トム・クルーズ法案」」の解説

「トム・クルーズ法案」

2006年5月4日、カリフォルニア州議会下院が通過させた、有資格の医療関係者以外への、超音波検査機の販売を禁止する法案。05年秋、人気俳優トム・クルーズが、妊娠した婚約者ケイティ・ホームズのために、自宅用に超音波検査機を購入し、自ら操作して、赤ちゃんが見えたなどと、テレビのインタビューで公言していることへの、医学界反発に基づく。 超音波(エコー)が、人体組織に振動や温度上昇を与えることによって、胎児に何らかの影響を及ぼす危険性については、科学的に実証されているわけでは必ずしもないが、医学的なメリットもないのに、ことに素人の操作によって、いたずらに胎児を超音波にさらすことは避けるべきだ、というのがその基本的主張である。著名俳優の事例が、一般人の超音波検査機購入の引き金になること、超音波による胎児の写真やビデオを記念に撮影したりする風潮警鐘を発する狙いもある。この法案に対しては、医学的根拠が不明確なものに政治が介入すべきではない、そこまで細かく法的規制の網を敷く必要があるのか、などの反論も表明された。なお、婚約者ケイティ・ホームズは、06年4月18日、無事、女児を出産している。(井上 健)

(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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