いの(町)(読み)いの

日本大百科全書(ニッポニカ) 「いの(町)」の意味・わかりやすい解説

いの(町)
いの

高知県中央部、吾川(あがわ)郡にある町。2004年(平成16)吾川郡伊野町(いのちょう)、吾北村(ごほくそん)と土佐(とさ)郡の本川村(ほんがわむら)が合併して成立。北は愛媛県と接する。北部は吉野川源流域を占め、瓶ヶ森(かめがもり)(1897メートル)一帯石鎚(いしづち)国定公園に含まれる。中・南部は西側を仁淀(によど)川が支流を集めながらほぼ東南流する。JR土讃(どさん)線、とさでん交通伊野線、国道33号(松山街道)、194号、439号が通じ、高知自動車道の伊野インターチェンジがある。1999年(平成11)に瓶ヶ森の東方、愛媛県境の寒風(かんぷう)山(1763メートル)南側に国道194号の寒風山トンネル(全長約5400メートル)が開通した。

 北部の吉野川流域の鷹ノ巣山遺跡は弥生中期の岩陰遺跡で、標高1150メートルという高所にある。南部の仁淀川東岸では、バーガ森北西麓(ろく)に縄文後期の奥名(おくな)遺跡があり、北斜面には弥生中期の高地性集落がある。天神溝田遺跡では銅剣銅戈(どうか)が発見されている。岩滝ノ鼻遺跡からは古墳時代の鉄斧、新田遺跡からは丸木舟が検出された。古墳時代後期の枝川古墳群もある。中世、中央部の仁淀川北岸には上八川(かみやかわ)を中心に吾川山(あがわやま)荘が成立、15世紀には吸江(ぎゅうこう)庵(高知市)領となる。北部は本川五党と称された土豪が割拠し、南部の波川(はかわ)には戦国末期に波川玄蕃(げんば)の拠る小研城(ことぎじょう)があった。江戸時代は仁淀川支流山間地の成山(なるやま)で土佐藩御用紙の七色紙が生産された。仁淀川に沿う伊野も土佐和紙の中心的生産地の一つで、上流山村で栽培されたコウゾ(楮)や紙などの商いも盛んとなり在郷町が成立した。野中兼山(けんざん)によって弘岡井筋が開かれて以降、仁淀川上流域の物資が伊野町の河湊で荷揚げされ、松山街道で高知城下に運ばれた。

 近代も工場製紙が発達、現在は手漉(す)き工場もあるが、さまざまな用途の紙を製造する機械漉き工場が中心である。このほかの産業はスギ・ヒノキの用材生産、米作のほかカンショ・バレイショ、ユズ、イチゴ、コウゾなどの栽培、肉用牛の飼育など。土佐和紙は国の伝統的工芸品に指定されており、近代に導入された土佐典具帖紙(とさてんぐじょうし)の手漉き和紙製造技術は国の選択無形文化財。本川神楽(かぐら)は国指定重要無形民俗文化財である土佐の神楽の一つ。椙本神社(すぎもとじんじゃ)の八角形漆塗神輿(はっかくがたうるしぬりしんよ)は国指定重要文化財。八代八幡宮(やしろはちまんぐう)の農村歌舞伎舞台(八代の舞台)は国の重要有形民俗文化財。吉野川最上流部にある山間民家の山中家住宅は国指定重要文化財。紙の博物館、県立紙産業技術センターがある。面積470.97平方キロメートル、人口2万1374(2020)。

[編集部]


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