いらたか念珠(読み)いらたかねんじゅ

改訂新版 世界大百科事典 「いらたか念珠」の意味・わかりやすい解説

いらたか念珠 (いらたかねんじゅ)

最多角,伊良太加,刺高とも書く。角(かど)のある108の珠を用いた数珠(じゆず)で,修験者が使用する。通常は,数珠をもむときには音をたててはならないとされているが,修験道では悪魔祓いの意味で,読経祈禱の際に,この数珠を両手で激しく上下にもんで音をたてる。〈いらたか〉とは,角が多い意だという説もあるが,一般には,もみ摺る音の高く聞こえることに由来するとされ,《木葉衣》は,梵語の阿唎吒迦(ありたか)の音を転じて名付けたと説く。《修験修要秘決集》は,108の数は煩悩を示し,数珠を摺ることで凡を転じて聖に入るという義だという。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のいらたか念珠の言及

【梓巫女】より

…能の《葵上》には照日と呼ばれる巫女が梓弓の弦をはじいて口寄せする謡がある。津軽地方のイタコは〈いらたか念珠〉を繰ったり弓の弦を棒でたたいて入神状態になる。また,陸前地方の巫女であるオカミンたちはインキンと称する鉦(かね)を鳴らしながら入神する。…

【山伏】より

… 鎌倉・室町時代にはこの修験道の山伏たちは,吉野,熊野,白山,羽黒,彦山(英彦山)などの諸山に依拠し,法衣,教義,儀礼をととのえていった。歌舞伎の《勧進帳》などで広く知られる鈴懸(すずかけ)を着,結袈裟(ゆいげさ)を掛け,頭に斑蓋や兜巾(ときん)(頭巾),腰に螺(かい)の緒と引敷,足に脚絆を着けて八つ目のわらじをはき,(おい)と肩箱を背負い,腕にいらたか念珠をわがね,手に金剛杖と錫杖(しやくじよう)を持って法螺(ほら)貝を吹くという山伏の服装は,このころからはじまった(図)。またこうした法衣は教義の上では,鈴懸や結袈裟は金剛界と胎蔵界,兜巾(頭巾)は大日如来,いらたか念珠・法螺貝・錫杖・引敷・脚絆は修験者の成仏過程,斑蓋・笈・肩箱・螺の緒は修験者の仏としての再生というように,山伏が大日如来や金胎の曼荼羅(両界曼荼羅)と同じ性質をもち,成仏しうることを示すと説明されている。…

※「いらたか念珠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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