おうし(牡牛)座(読み)おうしざ

改訂新版 世界大百科事典 「おうし(牡牛)座」の意味・わかりやすい解説

おうし(牡牛)座 (おうしざ)
Tauri

略号Tau。黄道星座の一つ。V字形ヒヤデス星団が牛の顔,数個の星の集りに見えるプレヤデス星団が牛の肩になる。ギリシア神話では,大神ゼウスフェニキアの王女エウロペのもとに通う時の化身の姿であるという。星空では天の川沿いにオリオンと向きあう。α星アルデバランは赤色巨星で〈あとに従うもの〉の意。プレヤデス星団に続いて東の地平線をのぼる星だからであるが,この星の和名〈あとぼし〉あるいは〈すばるのあとぼし〉は同一の発想に基づくものである。ヒヤデス星団は星数約100個,距離140光年の散開星団で,距離60光年のアルデバランはこの星団に属する星ではない。プレヤデス星団は星数約120個,距離410光年の散開星団で肉眼星6個の配置からはごいた星という和名もある。古くからは〈すばる〉と呼ばれ,勾玉(まがたま)をつらねた首飾になぞられた。ヒュアデスプレイアデスはともに巨人アトラスの娘たちで,母はそれぞれアイトラ,プレイオネの異母姉妹である。牛の角の先のζ星の近くにあるかに星雲は1054年の超新星爆発残骸で,水素の赤い輝線で輝く紐状物質(フィラメント)が視線速度毎秒1000km以上の激しい膨張を示し,また強烈な電波,X線の発生は当時の爆発の激しさを語るもので,その中心星は,電波のパルスを示す中性子星パルサーと呼ばれる天体である。概略位置は赤経4h30m,赤緯+18°。午後8時の南中は1月下旬である。
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百科事典マイペディア 「おうし(牡牛)座」の意味・わかりやすい解説

おうし(牡牛)座【おうしざ】

1月下旬の夕方,南の中天高く見える星座。α星はアルデバラン。プレヤデス星団,ヒヤデス星団,かに星雲などを含む。十二宮中の第2宮。ギリシア神話でゼウスがエウロペを誘拐(ゆうかい)するとき姿を変えた雄牛を象徴。

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世界大百科事典(旧版)内のおうし(牡牛)座の言及

【星】より

…しかし星座の起源についての説明は,ギリシア神話のなかでもつねに一定しているわけではない。たとえばおうし座は一説によれば,フェニキアの王女エウロペをゼウスの愛人にするために背に乗せて海を渡り,クレタ島まで運んだ牛が天にあげられたものだが,別の伝承によれば,クレタ王ミノスの祈りにこたえて,海神ポセイドンが海から出現させた牛である。ミノスの妃パシファエがこの牛に恋し,名工ダイダロスにつくらせた本物そっくりの牝牛の模型の中に入って,その牛の種を受けて半牛半人の怪物ミノタウロスを生んだという。…

※「おうし(牡牛)座」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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