おりない(読み)オリナイ

デジタル大辞泉 「おりない」の意味・読み・例文・類語

おり‐な・い

[連語]《「おい(入)りない」の音変化。「おりゃる」の否定形》
「いない」の尊敬語。いらっしゃらない。
父母の―・い国へは、お帰りない法で候ふと云ふぞ」〈毛詩抄・三〉
「ない」「いない」の丁寧語。ございません。おりません。
金竜山米饅頭よねまんぢゅうは―・いか」〈松の葉・三〉
(「…でおりない」の形で)…でございません。
「これへ参るも、べちなる事で―・い」〈虎清狂・禁野

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「おりない」の意味・読み・例文・類語

おり‐な・い

連語〙 (「御入り」に形容詞「ない」の付いた「御入りない」の変化したもの) 「ない」の意の敬語
[一] 「ない」の意の丁寧語。ありません。ございません。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)五「須臾は、教家に取やうがをり候。儒者にはをりない」
[二] 補助動詞として用いられる。断定、指定の意の丁寧語。(で)ございません、(で)ありません。
※京大二十冊本毛詩抄(1535頃)四「今朝廷賢臣の無いは、君の明にをりない謂れぢゃ程に」
※虎明本狂言猿座頭(室町末‐近世初)「わごりょをよび出すもべちの事ではおりなひ」
[語誌](1)肯定の「おいりある」「おりある」「おりそう」に対応するもので、もと尊敬語であったが、室町時代の末にはもっぱら丁寧語として用いられた。
(2)江戸時代になると「奴ことば」などに残るが、一般にはほとんど衰退した。
(3)狂言では「おりゃる」「おじゃる」の打消に「おりゃらぬ」や「おじゃらぬ」を用いることは稀で、この中世語「おりない」が多く用いられている。→「おりゃる」の語誌

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