かぶれ(接触皮膚炎)

EBM 正しい治療がわかる本 「かぶれ(接触皮膚炎)」の解説

かぶれ(接触皮膚炎)

どんな病気でしょうか?

●おもな症状と経過
 かぶれ(接触皮膚炎(せっしょくひふえん))とは、皮膚と接触した物質が原因となって炎症がおき、湿疹(しっしん)が生じたものです。急性期は皮膚が「ぶつぶつ、じゅくじゅく」、慢性期は「がさがさ、ごわごわ」した状態となり、いずれも赤くなってかゆみを伴います。かきむしると表皮が厚くなって治りにくくなります。

●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
 原因によってアレルギー性と非アレルギー性(刺激性)に分けられます。アレルギー性の場合は、皮膚に付着した物質の情報をTリンパ球という白血球(はっけっきゅう)の一種が記憶し、再び同じ物質に出会うと活性化され、皮膚に炎症をおこすものです。皮膚に付着して1~2日後に反応のピークが訪れる遅延型アレルギー反応となります。アレルギー反応は特定の物質に反応を示すようになった人にだけ発症します。
 一方、非アレルギー性(刺激性)のかぶれは、刺激性の物質が一定濃度で皮膚に付着すれば、だれにでも生じるものです。


よく行われている治療とケアをEBMでチェック

治療ケア]湿疹が生じている場所に副腎皮質(ふくじんひしつ)ステロイド薬(やく)の外用薬を用いる
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 軽度~中等度の接触皮膚炎に対して、中程度~強力な作用の副腎皮質ステロイド外用薬を短期間使った場合の有効性は、非常に信頼性の高い臨床研究で確かめられています。ただし、急性刺激性接触皮膚炎では副腎皮質ステロイド外用薬の効果がなかったという臨床研究もありますので、担当医とよく相談して使う必要があります。(1)~(5)(8)~(13)

[治療とケア]炎症が激しい場合は抗アレルギー薬を用いる
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 皮膚の炎症に対して、内服による抗アレルギー薬の効果があることが複数の信頼性の高い臨床研究で確認されています。(6)(7)

[治療とケア]軽症のときは外用の抗ヒスタミン薬を用いる
[評価]☆☆
[評価のポイント] 抗ヒスタミン薬の外用がかぶれに有効であることを示した信頼性の高い臨床研究は見あたりませんが、専門家の意見や経験によって支持されています。

[治療とケア]重症の場合では副腎皮質ステロイド薬を用いる
[評価]☆☆
[評価のポイント] 有効性を確認した質の高い臨床研究は見あたりませんが、全身に湿疹が生じているような重度の接触皮膚炎に対して、副腎皮質ステロイド薬を短期間内服することが、専門家の意見と経験によって支持されています。(1)


よく使われている薬をEBMでチェック

顔面以外に対して使用する副腎皮質ステロイド薬
薬名]フルメタ(軟膏)(モメタゾンフランカルボン酸エステル)(9)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]リンデロン-DP(軟膏)(ベタメタゾンジプロピオン酸エステル)(10)(11)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]デルモベート(軟膏)(クロベタゾールプロピオン酸エステル)(8)(12)(13)
[評価]☆☆☆☆
[薬名]マイザー(軟膏)(ジフルプレドナート)
[評価]☆☆
[評価のポイント] 顔面以外の湿疹に対する副腎皮質ステロイド薬の外用薬ではモメタゾンフランカルボン酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステルの効果が非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。そのほかの薬剤については専門家の間では支持されています。ただし、使用は短期間に限られます。

顔面に対して使用する副腎皮質ステロイド薬
[薬名]パンデル(軟膏)(酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン)
[評価]☆☆
[薬名]アルメタ(軟膏)(アルクロメタゾンプロピオン酸エステル)
[評価]☆☆
[評価のポイント] 顔面の湿疹に対する副腎皮質ステロイド薬の外用薬の効果は、臨床研究によって確認されていませんが、専門家の間では支持されています。

抗アレルギー薬
[薬名]ジルテック(セチリジン塩酸塩)(6)(7)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]アレグラ(フェキソフェナジン塩酸塩)(14)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 接触皮膚炎に対する抗アレルギー薬の内服効果は、非常に信頼性の高い臨床研究で認められているものと、臨床研究は見あたりませんが、同様の効果が期待され、専門家によって支持されているものがあります。セチリジン塩酸塩やフェキソフェナジン塩酸塩は第二世代抗ヒスタミン薬と呼ばれる薬で、抗アレルギー効果が高いために「抗アレルギー薬」と分類されています。

抗ヒスタミン薬
[薬名]レスタミンコーワ(軟膏)(ジフェンヒドラミン塩酸塩)
[評価]☆☆
[評価のポイント] 軽症の場合には、抗ヒスタミン薬の外用も有効であることが、専門家の意見や経験によって支持されています。

副腎皮質ステロイド経口薬
[薬名]プレドニン/プレドニゾロン(プレドニゾロン)
[評価]☆☆
[評価のポイント] 全身に湿疹が生じているような重度の接触皮膚炎に対して、信頼性の高い臨床研究は見あたりませんが、副腎皮質ステロイド薬を短期間内服することが、専門家の意見と経験によって支持されています。(1)


総合的に見て現在もっとも確かな治療法
かぶれをおこすものには触れないこと
 かぶれ(接触皮膚炎)は、ある物質が皮膚に付着することによって生じる皮膚の炎症です。肌のコンディションによっておこるもの、同じ物質に触れると必ずおこるもの、また炎症が実際におこるまで時間がかかるもの、かからないものなどいろいろな状態がありますが、アレルギー性接触皮膚炎の場合も非アレルギー性(刺激性)接触皮膚炎の場合も、もっとも大切なことは、原因となる物質を特定し、それに接触しないようにすることです。

軽度~中等度には副腎皮質ステロイド薬を
 軽度もしくは中等度の接触皮膚炎には、副腎皮質ステロイド薬の外用薬を使用することが推奨されています。また、実際に臨床研究でその効果が認められている薬もいくつかあります。ただし、使用は短期間に限るべきです。外用薬の場合、顔面と顔面以外では強さの違うものを用います。

慢性化しないためにも早期治療を
 接触皮膚炎の特徴として、かゆみがあります。ひどいかゆみを抑えきれず、かきこわしたりして慢性化したものは治癒までに時間がかかるため、早期に炎症を抑えることが重要です。かゆみが強い場合は、水や酢酸(さくさん)アルミニウムに浸した圧迫包帯で患部を冷やすと、かなりかゆみがおさまります。
 抗ヒスタミン薬の外用薬もかゆみを抑える効果があります。
 重症の場合は副腎皮質ステロイド薬(短期間)や抗アレルギー薬の内服が推奨されています。

(1)American Academy of Allergy, Asthma and Immunology, American College of Allergy, Asthma and Immunology. Contact dermatitis: a practice parameter. Ann Allergy Asthma Immunol. 2006; 97:S1.
(2)Bourke J, Coulson I, English J, British Association of Dermatologists Therapy Guidelines and Audit Subcommittee. Guidelines for the management of contact dermatitis: an update. Br J Dermatol. 2009; 160:946.
(3)Clemmensen A, Andersen F, Petersen TK, et al. Applicability of an exaggerated forearm wash test for efficacy testing of two corticosteroids, tacrolimus and glycerol, in topical formulations against skin irritation induced by two different irritants. Skin Res Technol. 2011; 17:56.
(4)Levin C, Zhai H, Bashir S, et al. Efficacy of corticosteroids in acute experimental irritant contact dermatitis? Skin Res Technol. 2001; 7:214.
(5)Le TK, De Mon P, Schalkwijk J, van der Valk PG. Effect of a topical corticosteroid, a retinoid and a vitamin D3 derivative on sodium dodecyl sulphate induced skin irritation. Contact Dermatitis 1997; 37:19.
(6)Purohit A, Melac M, Pauli G, et al. Comparative activity of cetirizine and mizolastine on histamine-induced skin wheal and flare responses at 24 h. Br J ClinPharmacol. 2002;53:250-254.
(7)Frossard N, Melac M, Benabdesselam O, et al. Consistency of the efficacy of cetirizine and ebastine on skin reactivity. Ann Allergy Asthma Immunol. 1998;80:61-65.
(8)Parneix-Spake A, et al. Eumovate ( clobetasone butyrate ) 0.05% cream with its moisturizing emollient base has better healing properties than hydrocortisone 1% cream : a study in nickel- induced contact dermatitis. J Dermatol Treat, 12 : 191-197, 2001.
(9)Veien NK et al. Long-term, intermittent treatment of chronic hand eczema with mometasonefuroate. Br J Dermatol. 140 : 882-886, 1999.
(10)English JS et al. A double-blind comparison of the efficacy of betamethasone dipropionate cream twice daily versus once daily in the treatment of steroid responsive dermatoses. ClinExpDermatol. 14 : 32-34, 1989.
(11)Granlund H et al. Comparison of cyclosporine and topical betamethasone-17, 21-dipropionate in the treatment of severe chronic hand eczema. ActaDermVenereol. 76 : 371-376, 1996.
(12)Faghihi G, Iraji F, Shahingohar A, et al. The efficacy of '0.05% Clobetasol + 2.5% zinc sulphate' cream vs. '0.05% Clobetasol alone' cream in the treatment of the chronic hand eczema: a double-blind study.J EurAcadDermatolVenereol. 2008 May;22(5):531-6.
(13)Bourke J et al.The efficacy of ’0.05%Clobetasol+2.5% zinc sulphate’cream vs.’0.05% Clobetasolalone’cream in the treatment of the chronic hand eczema : a double-blind study. Br J Dermatol.145 : 875-885, 2001.
(14)Katagiri K, Arakawa S, Hatano Y, Fujiwara S. Fexofenadine, an H1-receptor antagonist, partially but rapidly inhibits the itch of contact dermatitis induced by diphenylcyclopropenone in patients with alopecia areata. J Dermatol. 33 : 75-79, 2006.

出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報

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