デジタル大辞泉
「がに」の意味・読み・例文・類語
がに[接助]
[接助]
1 《上代語》動詞や完了の助動詞「ぬ」の終止形に付く。「がに」に上接する動詞の表す意が、今にも実現したり行われたりする状態や程度であることを表す。…しそうに。…するほどに。…するかのように。
「わがやどの夕影草の白露の消ぬ―もとな思ほゆるかも」〈万・五九四〉
2 動詞の連体形に付く。願望・命令・意志などの表現を受けて、目的・理由を表す。…するように。…するために。
「おもしろき野をばな焼きそ古草に新草まじり生ひは生ふる―」〈万・三四五二〉
「桜花散りかひ曇れ老いらくの来むといふなる道まがふ―」〈古今・賀〉
[補説]2の場合、「がね」の東国方言といわれ、中古では主として和歌に用いられる。
がに
1 カニのえら。食べてもまずく、有害とする俗説があった。「かには食ってもがに食うな」
2 (多くの地方で)カニのこと。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
がに
〘副助〙
① 活用語の終止形を受け、下の動作の程度を様態的に述べる。…せんばかりに。…するほどに。
※
万葉(8C後)八・一五五六「秋田苅る
借廬もいまだ壊
(こほ)たねば雁が音寒し霜も置きぬ我二
(ガニ)」
② 動詞の連体形を受け、将来の
事柄に関してそうなることを望む意を表わす。…するように。
※万葉(8C後)一四・三四五二「おもしろき野をばな焼きそ古草に新草まじり生ひは生ふる我爾(ガニ)」
※古今(905‐914)
哀傷・八二九「泣く涙雨と降らなん渡り川水まさりなば帰り来るがに〈
小野篁〉」
③ (②から転じて) まるで…するかのように。
[語誌]
上代の「がに」は東歌の
一例(②の挙例「万葉‐三四五二」)を除き終止形接続であり、中古以降の連体形接続の「がに」とは意味・
用法が異なる。中古以降の「がに」は上代の「がね」を母胎として、ほぼその意味・用法を継承しているが、それはさらに、「ゆふぐれのまがきは山と見えななむ 夜はこえじと宿りとるべく」(古今‐離別)のような同様の表現効果を持つ、「べし」の連用止めの用法にとって代わられるようになり、中世以降は擬古的な用例に限られる。→
副助詞「がね」
がに
〘名〙
① 蟹(かに)の鰓(えら)。
※女生徒(1939)〈太宰治〉「右の前足が少し短く、それに前足はO型でガニだから」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報