精選版 日本国語大辞典 「がらがら」の意味・読み・例文・類語
がら‐がら
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生後間もないころから3ヵ月くらいまでの乳幼児を主にした育児向きの音響玩具。柄のついた円形の胴に球を入れ,振るとガラガラと鳴るのでこの名で呼ばれる。おしゃぶりを兼ねているものもあり,手で握って振って遊べるようにつくってあるのは〈おにぎり〉という。日本では室町時代,京の御所の女官たちが紙製のものをつくったのが始まりといわれる。江戸時代には張子や曲物(まげもの)製の胴に小石を入れて,木や竹の柄をつけたもの,あるいは桐の木を円く挽(ひ)いてその中に土の鈴を入れ,木の柄を振ると鈴が鳴るものがあった。《柳樽拾遺》に〈桐の木でしたがらがらを礼者呉れ〉とあるのは,江戸時代,お年玉に扇形の棒様のものを桐箱に入れて配る風習があり,年始客がこの箱を振りがらがらとして子どもに与えた意である。また小板を紐でつないで指で鳴らす手づくり玩具もあり,これら乳幼児向きの音のする玩具は,すべて〈がらがら〉と呼んだらしい。振鼓(ふりつづみ)やでんでん太鼓も,がらがらの一種とされた。明治期にはブリキ製が登場,その多くは柄が笛につくられた。明治後期から大正期にかけてはセルロイド製が現れ,ぜんまい仕掛けのオルゴールの音響をとり入れたものもつくり出されて流行した。第2次大戦後はプラスチック製のものが多くなったが,東北地方などには木製挽物細工の作品が現在も見られ,紙製では名古屋などに伝承的ながらがらが残存している。がらがらは,乳児の感覚器官を育てるという意味ももつ。
執筆者:斎藤 良輔
小刻みに振り動かすことによって鳴らす体鳴楽器を楽器学ではこの名で総称するが,これは本来ドイツ語のラッセルRasselないし英語のラットルrattleの訳語として用いられたものである。乾燥した匏(ひさご)やマラカヤシの実の中に小石を数個入れ,これに柄をつけて振り鳴らす楽器(マラカス)はアメリカ大陸の先住民(インディアン)の間でひろく用いられているが,これはがらがらの代表的なものである。他に古代エジプトのシストルムsistrumのように金属製の枠に細い金属棒や金属の輪を数個ゆるく通してこれを振り鳴らすもの,さらに日本の鳴子(なるこ)のように木や竹で作りこれに綱をつけて間接的に振り鳴らすものも,この種の体鳴楽器に含められる。一般にがらがらは宗教儀式やそれに由来する歌舞に用いられることが多い。
執筆者:柘植 元一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
〔1〕柄(え)付きの丸い胴に小さな球などを入れ、振ると鳴る育児用玩具(がんぐ)。室町時代、京都の御所の女官が紙製のものをつくったのが最初という。その後、ブリキ製、セルロイド製、木製のものなどがつくられ、現在ではプラスチック製が多い。
対象は乳児なので、(1)握りやすく、しゃぶったり、かんだりしても歯ぐきを傷つけないもの、(2)乳児がじっと見、耳を傾けられるもの、(3)指でまさぐってみたくなるようなもの、などがよいがらがらの条件である。
[山崖俊子]
〔2〕振って鳴らす体鳴楽器。堅い木の実の殻や種、動物の歯や蹄(ひづめ)といった小さな発音体を紐(ひも)や棒に通してまとめたものと、ふくべ(ヒョウタンなど)の果皮や籠(かご)や亀甲(きっこう)などの容器の中に小石のような小さな堅い物を入れたものとがあり、柄(え)をつけられることが多い。振って鳴らすほか、くるぶし、膝(ひざ)、腰などにつけて、踊りのリズムを刻むように用いることもある。先史時代からあったとされ、分布は世界的であるが、分布状況は形により異なる。
[前川陽郁]
…この年ごろには,口に入れてしゃぶるくせがあり,感覚器官を育てるため,しゃぶって遊ぶように作られているのでこの名がある。がらがらを兼ねているものが多く,手で握って振れるように作ってあるのは〈おにぎり〉という。江戸時代から木製挽物(ひきもの)細工のものがあった。…
…
【玩具の起源】
現世人類がこの地球上に現れたころに,はたして玩具として位置づけられるものがあったかどうかは予測しがたいが,玩具に発展しうるものがすでに存在していたことははっきりしている。現存する最古の玩具は,古代エジプト時代の墳墓から出土しているものが多いが,その中には,人形,動物のミニチュア,舟のミニチュア,ボール,こま,がらがらなどがある。また,現代になっても,近代文明のいきわたっていない民族の間で親しまれている玩具を探ってみると,アメリカ・インディアンの鹿皮のボール,紀元前1500年ぐらいから続いているといわれるメキシカン・ボール,ニューギニアの木の葉を利用して作った帆舟,北アメリカのホピ・インディアンが儀式が終わると子どもに与えるという人形,アフリカのコーサ族のトウモロコシの穂軸で作られた人形などがある。…
※「がらがら」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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