デジタル大辞泉
「きぶい」の意味・読み・例文・類語
きぶ・い
[形][文]きぶ・し[ク]《中世・近世上方語》
1 厳格である。
「―・い人でよく清規を行はれたぞ」〈百丈清規抄・四〉
2 苛酷で容赦がない。
「法が―・ければ」〈史記抄・李斯伝〉
3 がまんできないほど、ひどい。
「こがらしの寒い寒い風が―・う吹くほどに」〈中興禅林風月集抄〉
4 刺激の強い味である。
「大人なぶりの骨膾ちと酢がすぎて―・からう」〈浄・本領曽我〉
5 険しい。
「坂の―・き事、屏風を立てたるが如し」〈伽・大仏の縁起〉
[補説]シク活用の「きびし」と同語源の語であるが、ク活用の例が多い。
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きぶ・い
〘形口〙 きぶ・し 〘形ク〙
① 厳格である。また、容赦がない。苛酷である。
※
明徳記(1392‐93頃か)下「今程は京方の禰宜神事に随て、庁務もきぶく沙汰仕時分也」
② 緊張している。雰囲気などがぴんと張り詰めている。
※俳諧・毛吹草(1638)五「きふく鳴や鶯にます
郭公〈意敬〉」
③ すきまがなくつまっている。
間断なく続いている。
※石山寺本大般涅槃経平安中期点(950頃)九「緻(キフク)密かなることなほ金剛の外の物を容けぬがごとし」
④ 険阻である。けわしい。
※御伽草子・大仏の縁起(室町末)「さかのきふき事、びゃうぶをたてたるがごとし」
⑤ 食べ物などの味が渋い。
※
四河入海(17C前)一〇「其味森々然として苦してしかもきぶいぞ」
※俳諧・両吟一日千句(1679)第三「さりながら
朱鷺の身ふる〈西鶴〉 きふい酢を懸けて出せる
烏賊の甲〈友雪〉」
⑦ けちである。
※雑俳・続耳勝手(1766)「あまいこと・きぶい客めが合点する」
[補注]「きびし」は普通シク活用であるが、古くはク活用で、この「きぶし」と関係があったか。「名語記‐六」に「きびしき事をきぶしといへる、きぶ如何。答、きふとき
ひとは同詞也。急の字の音歟。又きびしは密の字のよみ也。そのきびしをきぶしといへるにや」とある。
きぶ‐さ
〘名〙
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報