精選版 日本国語大辞典 「こっくり」の意味・読み・例文・類語
こっくり
こっくり
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民間で行われる占術の一種。〈こっくり〉と呼ばれる憑依(ひようい)霊を呼びだし,特殊な方法によってその神託を得るというものである。こっくりは通常キツネのような動物霊といわれ,〈狐狗狸〉とも書かれるが,起源は定かでなく,江戸中期ごろにキツネの神霊にうかがいをたてることが大都市域の民衆のあいだに広まったらしい。明治期以降は海外の心霊術とも習合し現在の形式が確立した。紛失物の捜索,取引の当否から私的な相談ごとに至るまで,霊への質問内容はさまざまである。しかし社会が不安定になると突発的に流行する傾向があり,日露戦争,第1次,第2次世界大戦前後,ならびに1970年代前半のオカルト・ブーム期などに大流行を見ている。しかし,こっくりが飯綱(いづな)や山犬に類したつきものであることから,稲荷信仰,犬寄せ,飯綱使いといった日本古来の民間呪術を背景としているとも考えられる。その占い方法は,まず,51音の文字,諾と否(イエスとノー),数字および鳥居の形を記した文字盤と,お告げの文字を指示するための割りばし(3本を束ね,三脚状に立てる)あるいはコップ,古銭などを用意する。通常3人で割りばしを鳥居の印の上に置き,こっくりが乗り移るまで精神集中する。やがて割りばしは自動的に動きだし,文字を次々に指して質問に答える。戌年生れの人が加わると憑依しないともいわれる。西洋ではウイジャ盤ouija board(ouiはフランス語,jaはドイツ語でともに〈イエス〉の意)あるいはプランシェットplanchetteと呼ばれ,19世紀以降発達した心霊学の実験器具としても広く用いられた。ほかに中国の〈竜神占い〉など類似の占術は世界各地に見られ,最近では心理学にいう自動筆記automatic writingやテーブル・ターニングtable turning(テーブルをノックすることで霊的会話を行う)の一種と考えられ,無意識的行動という視点からも分析されている。
→占い
執筆者:荒俣 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
こくりともいう一種の降神術、占法である。竹や箸(はし)状の30センチメートルくらいの棒を3本用い、その上部3分の1ほどのところを麻縄で縛り三脚状に棒を開き、その上に盆や飯櫃(めしびつ)の蓋(ふた)をのせ、それを囲んで3人の者が座り、片手をその盆の上にそっとのせる。「こっくりさん、こっくりさん足をあげてください」というと、3本の棒の一つが持ち上がる。そうすると、こっくりさんが憑(つ)いたと解しいろいろなことを問い出す。たとえば、約束した人が来るならば、「右足をあげてください」とか「左足をあげてください」とかの質問をし、それに応じて棒があがる。竹は女竹(めだけ)がよいといい、3人のうち1人は女が座るとよいという。こっくりを狐狗狸と書くのは当て字で、この三つの動物の霊が憑くなどという。
こっくりさんは江戸時代から行われたようであるが、明治19年(1886)ごろ非常に流行し、花柳界などで盛んにこれが行われた。三味線を弾いて3本足をいろいろとあげさせ、甚句踊りなどをさせたという。もちろん一般家庭でも娯楽として行われた。たれさんがくるか・こないかとか、吉凶を判じたりするのを、右とか左とかの足のあげ方によって試みたのである。この遊びのおこりについては、アメリカの船員によってわが国に伝えられたというが、確かなことはわからない。もちろん、アメリカに限らず世界の各地で行われている。栃木県芳賀(はが)郡茂木(もてぎ)町ではこの遊びをホックリサマといって、昭和10年(1935)ごろに流行したという。ここでは、盆の上に風呂敷(ふろしき)をかぶせ、その中に手を入れた。ホックリサマを呼ぶには昼より夜がよいという。
[大藤時彦]
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