こます

精選版 日本国語大辞典 「こます」の意味・読み・例文・類語

こま・す

〘他サ特活〙
[一]
① 与える。やる。つかわす。近世上方で用いた語で、相手を卑しめていう。
※虎明本狂言・痩松(室町末‐近世初)「こじきにとらするといふて、こまするぞ」
※浄瑠璃・太平記忠臣講釈(1766)八「百両の目腐り金、ほしかこまそ」
② だます、くどく、手に入れることをいう、博徒・てきや・興行師・不良仲間の隠語。〔日本隠語集(1892)〕
※浅草紅団(1929‐30)〈川端康成〉四六「コマス(たぶらかす)のもたはいわねえ」
[二] 補助動詞として用いる。動詞の連用形に「て」を添えた形に付いて、ある動作をしようとする自分意志を表わす。…してやる。やってやる。
※浮世草子・好色床談義(1689)四「たとい今宵の大水なぶりに死ぬるとまま、おもさましてこませんとやがて腹へ打あがり」
※雑俳・青木賊(1784)「待かねて・いっそほんまに寝てこまそ」
[補注](1)連用形以下は四段型の活用であるが、未然形に「こまさ」「こませ」の形がみられる。
(2)ののしり言葉として、俗語的に用いられる。前期上方語に端を発し、現在の関西でも俗語として残っている。
(3)「あげる」や「やる」が「てあげる」や「てやる」の形で「て」を介して補助動詞化して待遇表現に用いられるように、この語も「てこます」の形で補助動詞となる場合が多い。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「こます」の意味・読み・例文・類語

こま・す

[動サ特活]
与える。やる。主に関西で用いる。
「百両の目くさりがね、欲しか、―・そ、と取りて投げ捨て」〈浄・忠臣講釈
補助動詞として用いて、ある動作をしようという自分の意志を表す。…してやる。
「おのれ、脳天たやいて―・そかい」〈滑・膝栗毛・六〉
[補説]活用は「こまさ(こませ)・こまし・こます・こます・こませ・こませ」。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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