紙縒(読み)かみより

精選版 日本国語大辞典 「紙縒」の意味・読み・例文・類語

かみ‐より【紙縒】

〘名〙 細長い紙を、指先でよって糸のようにしたもの。かみなわ。こより。こうより。かんぜより。かみひねり。
大乗院寺社雑事記‐長祿二年(1458)九月一〇日「四十文、杉原一帖 カミヨリの用」

こう‐より かう‥【紙縒】

〘名〙 (「かみより(紙縒)」の変化した語) こより。かんぜより。
※百丈清規抄(1462)四「山伏はかうよりのやうなものを挂るぞ」

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改訂新版 世界大百科事典 「紙縒」の意味・わかりやすい解説

紙縒/紙撚 (こより)

和紙を細長く切ってよりをかけたもの。これをさらに2本,3本とより合わせて強度をましたものもある。〈かみひねり〉〈かみより〉または〈観世(かんぜ)より〉ともいう。よりつなぐことによって短い紙片から長い紙紐を作りだすことができる。上代には髪を結ぶのに麻糸を用いたが,7世紀に和紙が日本で作られるようになってから,こよりを用いたようである。これが後世の元結(もとゆい)の起源である。《万葉集》や《古今和歌集》にもすでに元結という言葉があらわれている。また贈物をしばるのに,もとは紅白にいろどった麻糸を用いたが,室町時代以後,水引の形式ができあがった。元結も水引もともに長いこよりに米糊をすりつけて乾燥し,これをこすって光沢を出してできあがる。こよりを〈観世より〉とも呼ぶおこりについては,(1)文明年間(1469-87)に観世太夫が翁(おきな)の烏帽子にその掛緒として用いたため,(2)徳川家康が観世太夫に命じて甲冑の毛切れや損所をつづり,つくろう材料として作らせたため,との2説がある。こよりそのものに俗信はないが,これが水引となれば色の染分けや結び方によって吉凶の別が生ずる。

 こよりを用いた製品は朝鮮で発達し,長門地方を経て日本にひろまったといわれ,江戸時代には上流家庭の家内工芸としてひろく行われた。製品としては徳利水筒,タバコ入れの筒,印籠入れ,笠,盆,膳,卓,行李などがあり,これらには漆塗がほどこされていた。また衣類としても,襦袢として夏に汗を防ぐために用いられ,明治時代に職人衆や車夫たちに愛用された。そのほか,こよりで織った紙布(しふ),紙帳(しちよう),熱海特産として知られていた雁皮(がんぴ)紙織などがある。特殊な用途としては人造パナマ帽がある。さらにこよりは,ふだん着の羽織の紐,また各種の帳簿のとじ料としても用いられた。その材料である和紙が手近にあるのと,その強さや柔軟性がとじたり結んだりするのに適当なためである。
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世界大百科事典(旧版)内の紙縒の言及

【ひも(紐)】より

…つる,樹皮,皮革,毛,布,糸,紙などを材料としてつくり,製作方法の相違によって組紐,織紐,編紐,裁(たち)紐,絎(くけ)紐,束(たば)ね紐などに分けられる。このほかにこよりも広義の紐の中に含められる。これらは縒(よ)る,組む,織る,編むという基本的な技法のいずれかでつくられる。…

※「紙縒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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