ごぜ唄(読み)ごぜうた

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ごぜ唄」の意味・わかりやすい解説

ごぜ唄
ごぜうた

盲目の女芸人の芸能。「ごぜ節」ともいい,三味線伴奏による声楽であるが,古くは鼓によったものともいわれる。「ごぜ」は「瞽女」などの漢字をあてるが,盲御前 (めくらごぜん) の略ともいう。『看聞御記』の応永 25 (1418) 年の条に,盲目の女芸能者の存在の記録があり,古くは『曾我物語』などを語ったともいう。江戸時代には,男性の盲人の「当道 (とうどう) 職屋敷」の組織に対して,江戸,駿河越後などに瞽女屋敷がおかれ,そこを中心としてその組織にきびしいしきたりが生れた。そのほか,甲府や美濃可児郡などの瞽女が知られる。現在では,越後の高田,長岡刈羽新発田などに,わずかにその命脈が保たれているにすぎない。何人かで小集団をなして旅かせぎをするが,その足跡はかなり遠くに及ぶ。門付 (かどづけ) 芸として行なった者も皆無ではないが,原則としては各地に招かれて座敷で演奏するもので,大名の奥方にかかえられることもあった。現存する越後の瞽女の扱うものは「段物」とも呼ばれる「祭文松坂」と「ごぜ口説 (くどき) 」との2種がその特色のあるもので,前者は三下りでおもに七五調後者は二上りでおもに七七調のいずれも叙事的な語り物である。その他,「新保広大寺」などの民謡や,はやり唄の類も扱い,その全国的な伝播一役を果した。さらに,義太夫節その他の音曲類も修得していて,都会地における興行からは遠隔地にある,地方農村娯楽に供することもあった。

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