さんす

精選版 日本国語大辞典 「さんす」の意味・読み・例文・類語

さんす

〘助動〙 (活用は、「さんせ・さんし・さんす(さんする)・さんす(さんする)・さんすれ・さんせ」) 聞き手に対する尊敬の意の加わった、動作をするものに対する尊敬を表わす。対称の動作に使用すると、かなり高い尊敬を表わし、他称の動作に使用すると、他称への尊敬と話相手に対する尊敬とが表わされることになる。お…なさいます。
① (助動詞「さしゃんす」の変化したもの) 上一段・上二段・下一段・下二段活用の未然形カ変連用形(まれに未然形)に付く。→語誌(2)。
仮名草子浮世物語(1665頃)一「又来さんしたか。早う往なんしなどいへば」
洒落本聖遊廓(1757)「コレ見さんせ、わたし心底は此通りでござんすと肩をぬげば」
② (助動詞「しゃんす」の変化したもの) 四段・ナ変の未然形に付く。
評判記難波物語(1655)「花のあしたには、いなさんすかの言葉をわすれかねて、たもとを春雨の露にびたつき」
浮世草子・風流夢浮橋(1703)三「うら向よりすだれあげ、はいらんせ、はいらさんせと呼込こゑもかしましく」
[語誌](1)発生当初は遊女ことばであったが、元祿一六八八‐一七〇四)頃には、一般女性も使用するようになり、江戸中期には、床屋関取侠客などの特殊な男性も使用し、さらに一般化していった。
(2)一音の一段活用動詞に接続する時は、「やさんす」となることがある。「まあ其処へ寝やさんせ」〔歌舞伎・吉祥天女安産玉‐二〕など。

さん・す

〘他サ特活〙 (活用は助動詞「さんす」に同じ。助動詞「さんす」がサ変に接続した「せさんす」の意に用いた語。ただし、「せさんす」の形は見られない) 「する」の意の尊敬の意に丁寧の意の加わった語。なさいます。
※評判記・難波鉦(1680)一「まことならば、ねびきにさんしたがよふござる」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「さんす」の意味・読み・例文・類語

さんす[助動]

[助動][さんせ・さんしょ|さんし|さんす・さんする|さんす・さんする|さんすれ|さんせ]《動詞「さんす」の助動詞化》動詞の上一段・下一段・上二段・下二段活用の未然形に付き、カ変動詞には連用形にも付く。丁寧の意を含んだ尊敬を表す。…なさいます。
「絹の下帯かいてゐさんす」〈浮・一代女・二〉
[補説]近世前期、上方の遊女の用いた語で、元禄(1688~1704)ごろからは一般の女性も用いるようになった。→しゃんす

さん・す[動]

[動サ特活]《動詞「さしゃんす」の音変化》「する」の丁寧の意を含んだ尊敬語。なさいます。
「せんかたなさに怖い事など―・せぬか」〈浄・女腹切
[補説]活用は助動詞「さんす」に同じ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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