精選版 日本国語大辞典 「しも」の意味・読み・例文・類語
し‐も
(副助詞「し」に係助詞「も」の重なったもの) 文中の連用語を受けてそれを特示強調する副助詞として働く。この下にさらに重なる助詞は係助詞のみである。「も」助詞の意味により、わずかの差ながら用法を分つことができる。
※土左(935頃)承平五年一月四日「このかうやうに物もて来る人になほしもえあらで、いささけわざせさす」
(ロ) 主として「必ずしも・ずしも・としも・にしも」等の形をとり、下に打消の語を伴って、部分否定の表現となる。下に打消を伴う場合の多くはこの用法である。→補注。
※続日本紀‐天平宝字八年(764)一〇月一四日・宣命「人の能(よ)けむと念ひて定むるも、必ず能(よ)く之毛(シモ)あらず」
※徒然草(1331頃)五八「道心あらば、住む所にしもよらじ」
(ハ) 「しも(こそ)あれ」の形で、強調表現となる。「時しもあれ」「折しもあれ」が最も多く、「折も折」「(他に)時もあろうに」等の意を表わす。中古に現われた用法。
※源氏(1001‐14頃)総角「事しもこそあれ。うたて、あやしと思(おぼ)せば物もの給はず」
しも
※漢書列伝竺桃抄(1458‐60)賈誼第一八「顧成之庿は生れていらしも時の生庿ぞ」
[語誌](1)活用形には、(未然)しも・しま、(連用)しも・しもう・しむ、(終止・連体)しも・しもう・しむ、(已然)しまえ、(命令)しめ・しまえ、が見られ、「しも」の系列と「しむ」の系列があるが、これらは、同様の用法をもつ。「しまう・しもう」(連用・終止・連体形「しま(も)う」音便形「しまっ」、命令形「しまえ」)と合わせ考えると、室町時代の口語における語形変化を反映したもので、シマウ→シモウ→シモ→シムのように変化したものとみられる。
(2)「しも」と「しむ」については、「漢書抄」「史記抄」など初期の抄物ではほとんど「しも」に限られているのに対して、後期の抄物では「しむ」が優勢になっている。室町時代末期には命令形「しめ」のみが存続した。
(2)「しも」と「しむ」については、「漢書抄」「史記抄」など初期の抄物ではほとんど「しも」に限られているのに対して、後期の抄物では「しむ」が優勢になっている。室町時代末期には命令形「しめ」のみが存続した。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報