てぐす(読み)テグス

化学辞典 第2版 「てぐす」の解説

てぐす
テグス
silkworm gut, fishing gut

元来は,野蚕などの体内から絹糸腺を取り出して,酢酸に浸し,引き伸ばして,乾燥して得られた天然てぐす(天蚕糸)を意味している.現在ではナイロンを用い,射出機でモノフィラメント紡糸し,延伸,熱処理したナイロンてぐす(nylon string)が主である.太さを自由に変化でき,強度など物理的性能がすぐれているため釣り糸などに広く用いられている.てぐすの太さの表示方法として,号数表示とラインクラス表示がある.号数表示では,1号 = 220デニール(D),2号 = 440デニールと号数と繊度(デニール)は比例し,号数が大きいほど太い.ラインクラス表示では,破断強度を10 MPa から600 MPa までの11クラスに分けたゲームフィッシング用規格である.最近では,自然環境保護のため,淡水や海水中で3~4か月で生分解される釣り糸が商品化されている.[別用語参照]ガット糸

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「てぐす」の意味・わかりやすい解説

てぐす

テグスサン絹糸腺からつくる魚釣り用の糸。この幼虫の老熟期に絹糸腺を取出し,希薄な酢酸に浸して引伸ばし,乾燥させて精製すると,白色透明で強靭なてぐす糸が得られる。日本では第2次世界大戦前,台湾にテグスサンを輸入して放し飼いしていた。またクスサンの絹糸腺からとった糸をてぐすの代用品に用いた。現在ではポリアミド合成繊維 (ナイロン) から合成てぐすをつくっている。

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百科事典マイペディア 「てぐす」の意味・わかりやすい解説

てぐす

ヤママユガ科のガ,テグスサンの幼虫の絹糸腺からとった絹糸。体内の絹糸腺を取り出し希酢酸で処理,引き伸ばす。透明でじょうぶなため釣糸,漁糸,外科用縫合糸,楽器の弦などに用いる。おもに中国南部で生産され,日本では家蚕から作っていた。最近はナイロンの出現で見られない。
→関連項目釣道具

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世界大百科事典(旧版)内のてぐすの言及

【釣り】より

…クローズドフェースリールもスピニングリールと同じ釣糸の出方をするが,さおに対して上向きにつけ,ルアーフィッシングなどに愛用される。
[釣糸]
 昔はカイコの幼虫の体内からとった繊維を精製したてぐす(天蚕糸)が使われた。その後,セルロースを酸で処理した人造てぐすができ,第2次大戦後は一般にナイロン糸と呼ばれる合成てぐすが普及しているが,伸びの少ないポリエステル系の糸もあり,船釣用として使われる。…

※「てぐす」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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