なも

精選版 日本国語大辞典 「なも」の意味・読み・例文・類語

なも

〘係助〙 係助詞「なむ」の上代語。主として散文に用いられるが、条件句を承けることが最も多く、連用語を承けるものは少ない。
法隆寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747)「御世御世爾母不朽滅可有物止奈毛、播磨国佐西地五十万代布施奉」
万葉(8C後)一二・二八七七「いつは奈毛(ナモ)恋ひずありとはあらねどもうたてこのころ恋の繁しも」
[語誌](1)口頭語的性格が強いためか、歌にはほとんど用いられておらず、「万葉集」には挙例一例のみである。この性格は中古において「なむ」に受け継がれている。ただ、後世の「なむ」が語を承けることができるのに対して、「なも」は語を承けることはあまりなく、引用句(「…となも」)や条件句(「…ばなも」「…どもなも」など)を承ける例が多い点が注意される。
(2)宣命には「…なも…く」のようにク語法で結ぶ例がある。ク語法は活用語を体言化するから、「…なも…く」は一種の体言止めと見られ、聞き手に対する念押し・確認を表わす用法と見てよい。

なも

〘助動〙 (活用は「◯・◯・なも・なも・◯・◯」) 推量助動詞「らむ」に相当する上代東国方言。終止法および「か」の結びとして現われる。別に「なむ」の形もある。→なむ
※万葉(8C後)一四・三四七六「うべ児なは吾(わぬ)に恋ふ奈毛(ナモ)立と月(つく)のぬがなへ行けば恋ふしかる奈母(ナモ)

なも

〘終助〙 終助詞「なむ」の古い形。
※万葉(8C後)一・一八三輪山をしかも隠すか雲だにも情(こころ)あら南畝(ナモ)隠さふべしや」

なも

〘終助〙 文末などにあって、軽く感情を添えて示す。ね。ねえ。な。なあ。
※雑俳・指使編(1851)「欲深のお袋・済ぬぞナモと出で来たり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「なも」の意味・読み・例文・類語

なも[係助・終助]

[係助]《上代語》係助詞「なむ」の古形。多く助詞に付く。
何時いつは―恋ひずありとはあらねどもうたてこのころ恋し繁しも」〈・二八七七〉
[終助]《上代語》終助詞「なむ」の古形。動詞・動詞型活用語の未然形に付く。
上野かみつけの乎度をど多杼里たどり川路にもらは逢は―ひとりのみして」〈・三四〇五〉

なも[助動]

[助動][○|○|なも|なも|○|○]《上代東国方言》動詞・動詞型活用語の終止形に付く。推量の助動詞「らむ」に同じ。→なむ[助動]
「うべなはわぬに恋ふなもつくのぬがなへ行けばこふしかるなも」〈・三四七六〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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