デジタル大辞泉
「ねば」の意味・読み・例文・類語
ね‐ば
[連語]
《打消しの助動詞「ぬ」の仮定形+接続助詞「ば」》
1 打消しの仮定条件を表す。もし…ないなら。「熱が上がらねば風呂に入ってよろしい」
2 打消しの恒常的条件を表す。…ないと絶対に。…ない場合はきまって。「冬が終わらねば春にならない」→にゃ →ねばならない
《打消しの助動詞「ず」の已然形+接続助詞「ば」》
1 打消しの順接確定条件を表す。…ないので。
「天の河浅瀬白波たどりつつ渡り果て―明けぞしにける」〈古今・秋上〉
2 1に同じ。
「筑紫道の可太の大島しましくも見―恋しき妹を置きて来ぬ」〈万・三六三四〉
3 打消しの逆接確定条件を表す。…ないのに。
「秋立ちて幾日もあら―この寝ぬる朝明の風は手本寒しも」〈万・一五五五〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
ね‐ば
(打消の助動詞「ず」の已然形に接続助詞「ば」の付いたもの)
① 打消の順接確定条件を表わす。…ないので。…ないから。
※
書紀(720)神功摂政元年三月・
歌謡「淡海
(あふみ)の海
(み) 瀬田の渡りに かづく鳥 目にし見え泥麽
(ネバ) いきどほろしも」
※
源氏(1001‐14頃)
夕顔「ことしこそなりはひにも頼むところ少なく、田舎
(ゐなか)のかよひも思かけねば、いと心細けれ」
② 打消の恒常的条件を表わす。…ないと。…ないとかならず。
※
万葉(8C後)二・一二三「たけばぬれたか根者
(ねば)長き妹が髪このころ見ぬにかき入れつらむか」
※
方丈記(1212)「世にしたがへば、身くるし。したがはねば、狂せるに似たり」
(イ) 打消の仮定条件を表わす。…ないなら。…ないうちは。また、「ねばならぬ」などとつづけて、義務・当然の意を表わす場合もある。→
ねばならぬ。
※歌舞伎・夕霧七年忌(1684)「返事を聞かねば帰りませぬ」
※
草枕(1906)〈
夏目漱石〉一「画であり詩である以上は
地面を貰って、開拓する気にもならねば、
鉄道をかけて一儲けする了見も起らぬ」
④ 打消の逆接的条件を表わす。
上代に多い用法。まだ…ないでいるうちに。…ないのに。→
補注。
※
古事記(712)上・歌謡「
太刀が緒も いまだ解かずて 襲
(おひ)すをも いまだ解か泥婆
(ネバ)〈略〉
青山に 鵼
(ぬえ)は鳴きぬ」
[補注]④の用法は、全くの逆接ではなく、「ば」が、順接の接続助詞として固定する以前の、已然形のはたらきを強調するものとして添えられた用法のなごりとみることができる。多く「…も…ねば」の形で用いられる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報