精選版 日本国語大辞典 「ばかり」の意味・読み・例文・類語
ばかり
※万葉(8C後)一二・二九四三「我命の長く欲しけく偽をよくする人を執らふ許(ばかり)を」
※源氏(1001‐14頃)蜻蛉「涙に溺ほれたるばかりをかごとにて」
③ (打消の助動詞「ぬ(ん)」「ない」などに下接して) ②から派生した用法。表面で…しないだけで実質的には…したのも同じということから、今にも…しそうであるの意を表わす。
※浄瑠璃・夕霧阿波鳴渡(1712頃)中「今の如く人中で、踏まれぬ斗(ばかり)に恥をかき」
※人情本・花筐(1841)五「何卒何卒(どうぞどうぞ)と手を合して、拝まぬばかりに頼みつつ」
[語誌](1)古く活用語を受ける場合、終止形に下接するものは①の「程度」を表わし、連体形に下接するものは②の「限定」を表わすとする説がある。
(2)①の「程度」と②の「限定」とは矛盾するように思われるが、おおよその程度を示すと、その範囲から除外されるものをつくり出し、範囲の内にあるものと範囲の外にあるものとが強調されるようになると限定の用法が生じることになる。しかし、「ばかり」の限定には程度の意味が残っていて、「のみ」「だけ」「きり」より限定の境界はあいまいで、ゆるやかである。そこにある種の情意が込められる。
(3)語源については、名詞の「はかり(計)」から転じたものと考えられる。上代では副詞的な要素に下接した「かくばかり」「いかばかり」の形が過半を占め、語源である名詞「はかり」の意そのままに「おおよそ…ぐらい」の意を表わしており、多く疑問・推量・仮定などの不確実な意味の表現において用いられているが、中古には確定的な意の表現と共存する例が多くなる。
(4)中古には①と②との中間的な「ほんの…ぐらい(だけ)」の意において用いられ、やがて②の限定の用法が成立する。
(5)上代には間投助詞「を」に上接する一例を除き、他の助詞と重ね用いられることはなかったが、中古には格助詞・係助詞に上接する例が現われる。中世には意味用法が主として②に偏し、体言性が薄れたため、格助詞に下接する例も現われる。
(2)①の「程度」と②の「限定」とは矛盾するように思われるが、おおよその程度を示すと、その範囲から除外されるものをつくり出し、範囲の内にあるものと範囲の外にあるものとが強調されるようになると限定の用法が生じることになる。しかし、「ばかり」の限定には程度の意味が残っていて、「のみ」「だけ」「きり」より限定の境界はあいまいで、ゆるやかである。そこにある種の情意が込められる。
(3)語源については、名詞の「はかり(計)」から転じたものと考えられる。上代では副詞的な要素に下接した「かくばかり」「いかばかり」の形が過半を占め、語源である名詞「はかり」の意そのままに「おおよそ…ぐらい」の意を表わしており、多く疑問・推量・仮定などの不確実な意味の表現において用いられているが、中古には確定的な意の表現と共存する例が多くなる。
(4)中古には①と②との中間的な「ほんの…ぐらい(だけ)」の意において用いられ、やがて②の限定の用法が成立する。
(5)上代には間投助詞「を」に上接する一例を除き、他の助詞と重ね用いられることはなかったが、中古には格助詞・係助詞に上接する例が現われる。中世には意味用法が主として②に偏し、体言性が薄れたため、格助詞に下接する例も現われる。
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