ひやま

改訂新版 世界大百科事典 「ひやま」の意味・わかりやすい解説

ひやま

民俗芸能。山形県飽海(あくみ)郡遊佐町杉沢に伝えられる番楽(ばんがく)(山伏神楽)で,ひやま番楽とも杉沢比山とも称する。国指定重要無形民俗文化財。東北地方に伝わる山伏系の神楽番楽の一種であるが,演者は早くから杉沢集落の男性とされた。古くは若者組入りすると素面の《三番叟》,早舞(はやまい)の《景政》から習いはじめ,《翁》《鳥舞》《みかぐら》《大江山》《曾我》《信夫(しのぶ)》などの曲に進む。現在14曲を伝える。なお《翁》とは別に,白式尉面(じようめん)をつけて舞う《番楽》という曲もある。上演は8月6日(仕組み),15日(本舞),20日(神送り)の3回で,15日のみ全曲を演じる。舞台は氏神の熊野神社境内に特設するが,神社と関係はない。舞台は2間四方の三方吹抜けで,後方幕の背後が囃子方兼楽屋。大締太鼓,小太鼓,笛,銅拍子の囃子で謡(うた)い手が2人以上つく。《大江山》などの武士舞は素面の2人が謡につれて,手甲,脚絆にたすき姿で象徴的な振りで舞うが,《蕨折(わらびおり)》のように,女の裏切りを恨む船頭の老人を主人公とした劇的内容をもつ曲も伝える。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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