アオキ(読み)あおき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アオキ」の意味・わかりやすい解説

アオキ
あおき / 青木
桃葉珊瑚
[学] Aucuba japonica Thunb.

ミズキ科(APG分類:アオキ科)の常緑低木。高さ2~3メートルの株立ちになり、枝は緑色で太い。葉は対生し、長楕円(ちょうだえん)形、長さ8~20センチメートルで縁(へり)に粗い鋸歯(きょし)があり、濃緑色で質が厚く表面につやがある。3~4月ごろ枝先に円錐(えんすい)花序をつけ、紫褐色の小さい花弁4枚の花が開き、雌株と雄株の別がある。雄花には雄しべ4本、雌花には雌しべが1本ある。果実は雌株につき、楕円形、長さ1.5~2センチメートルの核果が初冬に深紅色に色づき、翌年の春までついている。宮城県以南の本州、四国、九州、沖縄の樹林下に生える。耐陰性、耐寒性があって栽培しやすいので、広く庭に植えられ、目隠し、風よけ、下木などに利用する。

 いろいろな園芸品種があり、アマノガワは葉の全面に淡黄色の斑点(はんてん)が多く、キンアオキは葉が黄色で緑色の斑点がある。シロミノアオキは花が淡緑色で果実が淡黄白色になり、ホソバアオキは葉が線状披針(ひしん)形で細い。変種のヒメアオキvar. borealis Miy. et Kudoは葉がやや小さく、若い枝や葉柄、葉の裏面葉脈上などに微毛があり、北海道南部、本州の日本海側に生え、多雪地方でもよく育つ。

 民間では、葉を刻んで銀紙に包み、火にあぶって泥状にしたものをおできに塗布する。百草(ひゃくそう)、陀羅尼助(だらにすけ)などの黄柏(おうばく)エキスの黒いつやをよくするのに葉を加える。また、葉を牛や馬の飼料にする。

小林義雄 2021年5月21日]

 APG分類ではアオキ属はミズキ科から独立し、ガリア属とともにGarryaceae(アオキ科)とされた。科の和名はガリア科とすることもある。アメリカ西部からメキシコにガリア属、東アジアにアオキ属がある。

[編集部 2021年5月21日]

 元禄(げんろく)時代(1688~1704)までに栽培化されていたアオキは、貝原益軒(えきけん)の『花譜』(1694)には、「赤い実も見るに絶えたり」と出ている。また増田金太の『草木奇品家雅見(そうもくきひんかがみ)』(1827)には、七つの斑(ふ)入り品種があがっている。海外には、1783年(天明3)にイギリスジョン・グレツァーが日本からヨーロッパへ伝えて、大きな反響をよんだが、雌木の株で結実せず、その後1860年(万延1)に横浜開港とともに来日したフォーチュンが雄木を採集し、軍艦でイギリスに運んだ。

[湯浅浩史 2021年5月21日]


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改訂新版 世界大百科事典 「アオキ」の意味・わかりやすい解説

アオキ (青木)
(Japanese)aucuba
Aucuba japonica Thunb.

ミズキ科の常緑樹。広く観賞用として栽植される。耐寒性,耐陰性があるので世界的な庭木として,また寒い地方の室内観葉植物としても栽植されている。対生する大きな濃緑の葉と,冬の鮮紅色の実を賞するが,雌雄異株であるので,株を選んで雌雄を植えないと結実しない。花期は4~5月で,4枚の萼片と4枚の花弁をもつ。果実は紅熟し12月から3月ころまで樹上にある。種子は大きく,1個。関東以西の本州,四国に分布する。変種のヒメアオキvar.borealis Miyabe et Kudoが東北から北陸,山陰の多雪地帯に自生し,ナンゴクアオキは沖縄から九州や中国地方西部に分布する。薬用に民間で利用されることもあるが,観葉植物的な園芸利用が中心で,園芸品種には斑入葉や葉形の変わったものがある。ダルマアオキはヒメアオキの系統で,ホシテンヒメアオキ,ホソバヒメアオキ,ヒロハヒメアオキなどとともに観賞用に栽培されている。

 アオキには葉に斑が点々と入ったアマノガワアオキ,覆輪に白斑が入ったフクリンアオキ,葉の中央部に斑の入ったナカフアオキなどの斑入葉が多くあり,細葉の品種のホソバアオキ,実が黄熟するキミノアオキなどがある。

 繁殖は7~8月に新枝を挿す。実生は4~5月に果実をそのまま腐植土の適湿な土にまくとよく,6~7月に発芽するから,秋に畑地へ植え替えて,冬季は防寒すればよく生育する。病害や虫害の被害は少なく丈夫である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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