アグレ(読み)あぐれ(英語表記)Peter Agre

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アグレ」の意味・わかりやすい解説

アグレ
あぐれ
Peter Agre
(1949― )

アメリカの生化学者。ミネソタ州ノース・フィールドに生まれる。オーガスバーグ大学で化学を学び、1970年に卒業、ジョンズ・ホプキンズ大学医学部に進み、1974年博士号を取得した。ノース・カロライナ大学で医学研究員を務めたのち、ジョンズ・ホプキンズ大学に戻り、1984年医学部の教職につき、1993年生化学教授となった。なお、2002年(平成14)に来日し、各地で講演を行っている。

 血液腎臓(じんぞう)の研究を行っていたが、1991年に赤血球の膜タンパクが水チャンネルであることを発見した。水チャンネルは、水を選択的に通す細胞膜タンパクで、従来は水が細胞膜を拡散作用によって通過すると考えられていたため、この発見は画期的なものであった。水チャンネルはアクアポリンと名づけられ、その後、多くの種類のアクアポリンが発見されている。この業績により、2003年のノーベル化学賞を、カリウムイオンを通すチャンネルを解明したマキノンと同時受賞した。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アグレ」の意味・わかりやすい解説

アグレ
Agre, Peter

[生]1949.1.30. ノースフィールド
アメリカの化学者。 1974年にジョンズ・ホプキンズ大学医学部を卒業,ノースカロライナ大学などで研修,研究ののち,1981年に母校に戻り,1993年に生化学の教授となる。 1988年,赤血球の研究をしていたアグレは役割不明の蛋白を発見し,その後この蛋白が細胞に水を通す通路であることを証明した。東京医科歯科大学の佐々木成らも同様の働きをもつ蛋白を発見,アグレとともにアクアポリンと名づけた。さらに,アグレと京都大学の藤吉好則はアクアポリン水チャンネルの構造とメカニズムを明らかにした。アグレはその業績により 2003年にロデリック・マッキノンとともにノーベル化学賞を受賞した。

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