アケビコノハ(英語表記)Adris tyrannus

改訂新版 世界大百科事典 「アケビコノハ」の意味・わかりやすい解説

アケビコノハ
Adris tyrannus

鱗翅目ヤガ科の昆虫。大型のガで,開張10cm内外。前翅は一見枯葉に似て褐色後翅は鮮やかな黄色で中央に黒色の紋があり,外縁には黒色の太い帯を有する。夜行性で,昼間静止するとき後翅は前翅の下に隠れるので発見しにくい。日本,中国,インド北部など暖温帯分布し,各地の平地にふつう。幼虫アケビの葉を食うためこの名があるが,ムベにも発生する。7~9月に羽化。強大な口吻こうふん)を有し,夜間各種の果樹に飛来し,ブドウモモナシなどの熟果に穿孔(せんこう)して吸液するため大きな被害を与える。亜熱帯地域では本種に代わって近似種ヒメアケビコノハOthreis fulloniaを産し,日本西南部にも生息している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アケビコノハ」の意味・わかりやすい解説

アケビコノハ
あけびこのは / 通草木葉
[学] Adris tyrannus

昆虫綱鱗翅(りんし)目ヤガ科に属する大形のガ。はねの開張は50ミリメートルに達し、前翅は枯れ葉状で緑褐色、静止するとき、美しい黄色に黒色紋のある後翅をその下に隠す。幼虫はアケビのほか庭園のムベに発生するので、住宅地でみることも多い。ヒマラヤから中国、日本、ロシア連邦アムール地方に分布する。類似のコノハガはアジアに広く分布するほか、アフリカ、南アメリカの熱帯に多い。日本ではほかにヒメアケビコノハやキマエコノハを産する。いずれも夜間果樹園に飛来し、モモ、ブドウ、ナシ、ミカンなどの熟果の液を吸って大害を与える。

[杉 繁郎]

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百科事典マイペディア 「アケビコノハ」の意味・わかりやすい解説

アケビコノハ

鱗翅(りんし)目ヤガ科の1種。開張100mm内外,前翅は一見枯葉によく似ていて,枯葉に止まると判別困難。幼虫はアケビ,ムベなどの葉を食べ,大きな眼状紋がある。成虫は夏〜秋に出現し成虫で越冬。ブドウ,リンゴ,モモなどの果実から吸汁する。分布は日本全土,中国大陸からインドまで。
→関連項目ヤガ(夜蛾)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アケビコノハ」の意味・わかりやすい解説

アケビコノハ
Adris tyrannus amurensis

鱗翅目ヤガ科。前翅長約 50mmの大型のガ。前翅は先端がとがり,形,色彩ともに枯れ葉に似る。後翅は橙黄色で大きな黒色紋が2個ある。体は太い。夏季発生し,成虫で越冬する。幼虫は黒紫色で,白色の眼状紋があり,アケビ,ムベ,ヒイラギ,ナンテンなどの葉を食べる。成虫はブドウ,モモなどの果実に口吻を刺して汁を吸い,ときに大害を与えることがある。北海道,本州,四国,九州,東アジア,インドに広く分布する。

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