アッケシソウ(読み)あっけしそう

改訂新版 世界大百科事典 「アッケシソウ」の意味・わかりやすい解説

アッケシソウ (厚岸草)
Salicornia europaea L.

ユーラシア寒帯に広く分布するアカザ科の一年生海岸植物。芽立ちは鮮緑色だが,秋には茎が赤く色づく性質がある。河口などの塩分の多い泥地に大きな群落をつくり,真っ赤に色づいた群落は美しく人目を引く。茎は高さ10~35cm。よく分枝し,枝は細長い棒形で多肉質である。葉は著しく退化しており,対生する1対の葉が高さ0.6mm程度の膜状の筒に変形している。筒状の葉が棒形の茎に並ぶ様子は甲殻類の脚の関節を思わせ,イギリスではcrab-grassの名がある。花は秋に筒状の葉の腋(えき)に3個ずつつくが,小さく目だたない。花被は合着し,中に果実を包みこむ。日本では北海道のほか,瀬戸内海沿岸の塩田に生育地がある。アッケシソウ属は北アメリカまで分布する。ヨーロッパではホウレンソウのように野菜として,またピクルスの材料にも使う。また古くは焼いたアルカリ性の灰をガラス製造に用いたので,glasswort英名もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アッケシソウ」の意味・わかりやすい解説

アッケシソウ
あっけしそう / 厚岸草
[学] Salicornia perennans Willd.
Salicornia europaea L.

アカザ科(APG分類:ヒユ科)の一年草。海水の出入する砂地に生え、茎は高さ10~35センチメートル、濃緑色、円柱形で関節があり、多数の枝を対生する。葉は関節部に対生し、鱗片(りんぺん)状で基部は鞘(さや)状に合着する。花期は8~10月。花は枝端の葉腋(ようえき)のへこみに数個束生して穂状花序をつくり、両性。花被(かひ)は菱(ひし)形状卵形で小さく、雄しべ1~2本、子房は卵形で2本の花柱があり、果実は花被に包まれる。北半球の塩性湿地に広く分布し、北海道、本州、四国にみられる。名は発見地、北海道厚岸(あっけし)の地名によるもので、秋に全草が赤くなるのでヤチ(谷地)サンゴの別名がある。

[小林純子 2021年1月21日]

 日本での分布は、現在は北海道、岡山県、香川県のみである。

[編集部 2021年1月21日]


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百科事典マイペディア 「アッケシソウ」の意味・わかりやすい解説

アッケシソウ

アカザ科の一年草。北半球に広く分布,日本では北海道,四国(瀬戸内海沿岸)に見られる。海岸の塩水をかぶる砂地に群生する。茎は直立し,高さ15〜20cm,円柱形で関節がある。濃緑色だが,秋に鮮やかな紅紫色に紅葉するのでヤチサンゴの名もある。8〜9月に円柱形の穂状花序をなし,節間のくぼみに小さな3個の花をつける。花被は合一し,肉質,おしべは1〜2個。子房は卵形,柱頭2個。北海道厚岸で発見されたのでこの名がある。
→関連項目霧多布湿原

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世界大百科事典(旧版)内のアッケシソウの言及

【厚岸湾】より

…厚岸湖は面積約32km2の塩湖で,カキの養殖などが行われている。湖の西部に連なる牡蠣(かき)島は,天然のカキ殻などが堆積したもので,アッケシソウ,ウミミドリなどの塩性植物群落として天然記念物に指定されているが,地盤沈降や水質汚濁などのため湖岸部を除けば,ほとんど見られなくなった。湾口にある大黒島は周囲6km,最高点103mの段丘面が広がり,周囲は急崖で海鳥の繁殖地として天然記念物に指定されている。…

※「アッケシソウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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